官僚の倫理/再発防ぐ評価ルールを

 自身に絡む情報公開請求の漏えい問題の責任を取るとして野田聖子総務相が、1年分の閣僚給与を全額自主返納し、漏えいした側の金融庁は職員ら4人を文書などで厳重注意処分とした。

 野田氏に関係する文書の公開請求を受けた金融庁は開示前の5月下旬、関連資料を総務省側に渡し、朝日新聞からの請求であることも口頭で伝達。伝えられた野田氏は、その内容を第三者に漏らしていた。

 発端は金融庁職員の漏えいだが、野田氏は伝え聞いた段階で、関連資料を返却させるとともに金融庁を指導、事案を公表すべきだった。官僚の不正行為を政治側が正せなかったどころか一端をなしてしまった。情報公開制度の所管閣僚だったことを勘案すれば閣僚給与約160万円の返納で済む話ではないだろう。

 この事案に限らず、財務省の決裁文書改ざんや陸上自衛隊イラク派遣部隊の日報隠蔽(いんぺい)など国会をも欺くような官僚の不正行為が後を絶たない。

 不正が発覚するたびに罰則の厳罰化や禁止規定の新設などが叫ばれ、対策も打ち出されてきた。しかし官僚が「絶対ばれない」と思えば、考えられないような愚挙を犯すということは決裁文書改ざん事件を見れば明らかだ。

 もはや、「官僚が不正を行う可能性がある」との前提に立つことも必要だろう。その上で、不正を告発したり、関与を拒んだりした場合には人事評価に反映させるようルール化すべきではないか。

 麻生太郎財務相は決裁文書改ざんの調査結果を公表した6月の記者会見で、改ざんに関わることを拒否した近畿財務局の職員が複数いたことを明らかにしている。まずは、良心に基づくその行動を高く評価し、公表してはどうか。

 財務省は拒否した職員が何人でどのような経緯だったのか、プライバシーを理由に明らかにしないが、それでは後に続く者は出てこない。

 現在の中央省庁の人事評価制度は、採用年次などにとらわれない処遇を目指して、2012年から全面導入された。判断、調整といった能力を年1回、業績は年2回、評価し、昇給や勤勉手当(ボーナス)、昇任に反映させている。

 国家公務員制度改革基本法は「国民全体の奉仕者としての職業倫理を確立する」ことを人事評価の目的に掲げている。しかし、内閣人事局と人事院が作成したマニュアルでは不正行為の告発や拒否を評価するのか、するならどう評価するのか明確には規定されていない。不正行為が、あってはならない特殊な事象と考えられているからだ。

 また、人事院には、国家公務員倫理法などに違反する行為の早期発見と未然防止のため「公務員倫理ホットライン」が設けられており、各府省庁にも通報窓口が設置されているが、決裁文書改ざんや日報隠蔽など政権を揺るがすような不正行為の把握には至っていない。内部告発が肯定的に評価されるのか否かが不明なためとみられる。

 従来通りの対応では、大島理森衆院議長が異例の所感で決裁文書改ざん事件などを例に挙げて「民主主義の根幹を揺るがす問題。立法府の判断を誤らせる恐れがある」と指弾したような不正行為の再発を防ぐことはできない。

2018年8月16日 無断転載禁止