イージス・アショア/費用対効果が疑問だ

 2019年度予算の概算要求の調整が大詰めを迎える。社会保障で国民の負担が増える一方、伸び続けるのが防衛費だ。自民党の国防関係部会は「対国内総生産(GDP)比2%」を挙げ、1%未満で推移する防衛費の増額を求めている。

 中でも注目されるのが、対北朝鮮を想定して政府が昨年末に導入を決めた陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」だ。その後の米朝首脳会談の結果「朝鮮半島の完全な非核化」で合意し、情勢は変化した。

 確かに、小野寺五典防衛相が指摘するように「北朝鮮の核・ミサイル廃棄は進んでいない」。政府はそれを理由に導入の必要性を力説する。北朝鮮の行く末は予断を許さないが、だからと言って、イージス・アショアが不可欠と訴えるのは短絡的ではないか。

 しかも、政府は製造元の事情で配備時期が当初の23年度から25年度以降へ先延ばしになると明かした。果たして、その時に北朝鮮情勢はどうなっているのか。

 軍事上の「脅威」は能力と意思の掛け算だ。核・ミサイルを手放していなくとも、意思が低下すれば脅威は下がる。仮に脅威が高まっていても、イージス・アショアが巨費投入に見合う費用対効果を得られるか疑問だ。

 政府はイージス・アショアを秋田市と山口県萩市に計2基を配備する計画で、当初は1基当たり800億円と想定していた。ところが最近、1基1340億円、2基で2680億円と大幅アップを発表。これに導入後の維持・運用費を加えると、総額は4664億円と説明した。

 ただ試算には日米共同開発の迎撃ミサイルの経費は入っていない。防衛省筋によると1発約40億円。1基に24発の搭載が検討され、1基960億円、2基で1920億円になる。さらに施設建設費や土地整備費など試算に含まれない経費が上積みされていく。

 イージス・アショアの購入は、米政府の有償軍事援助(FMS)に基づく。価格や納期は、米側の提示を受け入れなければならず、いわば「言い値」。イージス・アショアも試算をさらに上回る可能性が高い。

 FMSによる購入額は08~12年度の計約3647億円から、安倍政権が予算編成した13~17年度には計約1兆6244億円へ跳ね上がった。トランプ米政権は武器や装備の売り込みに熱心で、FMSでの売却は加速するだろう。

 イージス・アショアはイージス艦搭載のレーダーやミサイル発射装置を地上に固定して迎撃する。防衛省は要員の負担が軽減され「24時間365日の常続的な任務態勢になる」と有用性を説く。

 運用するのは定員15万人の陸上自衛隊だ。4万7千人近くの航空自衛隊と4万5千人超の海上自衛隊を足しても陸自に及ばない。防衛の比重が海自と空自へ移る中、イージス・アショアの導入には、巨大な陸自の組織防衛も見え隠れする。

 予算配分も硬直化して久しい。イージス・アショアを配備し始めれば、後戻りは難しくなる。米国からの装備購入の在り方を精査しない限り、安全保障予算は効率性を欠く。将来「無用の長物」と烙印(らくいん)を押されかねない巨額の配備を再考すべきだ。

2018年8月17日 無断転載禁止