障害者雇用水増し/徹底調査し全容解明を

 国土交通省や総務省など多くの中央省庁が障害者雇用数を水増しし、法律で義務付けられた割合に達していない状態を40年以上も続けていたことが判明した。障害者への差別をなくし、就労機会拡大を主導すべき政府部内での極めて悪質な行為で、国民、障害者への裏切りというしかない。政権が進める「働き方改革」以前の問題だ。徹底した調査で全容を解明し早急に改善を図らなければならない。

 各省庁が、障害者雇用促進法が義務付けている法定雇用率を順守しなかったため、障害者は、本来なら得られた中央省庁で働く機会を不当に奪われたことになる。水増しが42年間にわたって続いていたことを考えれば、影響を受けた障害者は相当の数に上るだろう。これだけでも罪深いと言わざるを得ない。

 中央省庁がなぜ、水増しを続けてきたのか調査結果を待たなければ詳しいことは分からないが、拘束時間の長さや、突発的な事象への対応が多いことなどから、採用が進まなかったとの指摘もある。

 しかし一定数の障害者を受け入れ、持っている能力を発揮してもらうことが官民の各職場に課されている。業務の特殊性で、法定雇用率の未達を正当化はできない。民間の仕事でも、営業系などは取引先の都合で、予定が立てにくい状況はいくらでもある。

 働く喜びは誰にとっても自立につながる。雇う側も障害者からの視点を学ぶことで業務を進める上での視野が広がる。この相互作用を通じて、社会全体を改善していくことが障害者雇用政策の目的である。政策を推進する本元である中央省庁に、いまさら、こんな指摘をしなければならないのが情けない。事態はそれほど深刻だということだ。

 民間企業は景気に業績が左右され、状況によっては赤字を計上することもある。こうした中でも義務付けられた障害者雇用を維持するよう努力をしている。達成できなければ、納付金を徴収されたり、企業名を公表されたりすることもある。

 これに対し、中央省庁の場合は、毎年定期的に障害者雇用数を厚生労働省に報告するが、内容の真偽を確認する仕組みはないという。これでは、官民間で公平性を担保できていないし、制度上の不備が放置されたままだ。

 省庁からの報告を確実にチェックし、目標未達ならペナルティーを科すような機能を早急に整備したい。全容解明まで待たずに、必要なら応急措置を講じなければならない。

 各省庁は、障害者手帳交付に至らない障害の程度が軽い障害者を合算することで、法定雇用率をクリアしたように見せかけていたという。不当な行為と分かっていながら採用担当者の間で長年、引き継いできた手法なのだろうか。採用担当部門だけで判断できたのか、上層部の関与、圧力はなかったのか。これは、何も安倍政権下で発生した問題ではないが、官僚への不信感にさらに拍車を掛ける結果になった。

 政権が取り組む労働問題の優先順位は明らかになったはずだ。まずは、この問題の徹底調査と再発防止策の策定に全力を挙げなくてはならない。生産性向上のためとしている裁量労働制の適用拡大などは後回しでいいだろう。

2018年8月18日 無断転載禁止