トルコ通貨急落/連携して危機回避を

 トルコの通貨リラの急落が世界の金融市場を動揺させている。きっかけは米国との対立の激化で、このままでは世界経済に悪影響が及ぶ恐れがある。両国が関係改善の道を探るのはもちろん、主要国の金融当局は連携して危機回避に努めなければならない。

 リラ急落の発端は、トルコ在住の米国人牧師の拘束を巡りトランプ米大統領が輸入制限強化を表明したことだ。リラは10日、外国為替市場で前日から約2割、年初から4割以上下落し、「暗黒の金曜日」と呼ばれた。

 このショックが新興国全体に広がり、アルゼンチンやインド、南アフリカなどの通貨が一斉に大幅下落。日本、米国、欧州などの株式市場も軒並み値を下げ、世界同時株安となった。

 その後、トルコの銀行監督当局が事実上の金融引き締めを決め、リラ相場はひとまず落ち着きを取り戻した。しかし、トルコと米国の間で制裁措置の応酬が続くなど両国の対立が深刻化している上に、トルコの対応に市場の不信感が強く、リラが再び急落する懸念は解消されていない。

 リラ急落に拍車を掛けたのは、エルドアン大統領の拙劣な経済運営だ。トルコは通貨下落と高率のインフレに直面しており、この二つを抑制するには、中央銀行が金利を引き上げなければならない。しかし、エルドアン氏は「貧しい者をさらに貧しくする」と利上げを敵視しており、中央銀行は6月以降、利上げを見送っている。

 リラの下落を完全に食い止めるには、まず中央銀行が利上げに踏み切ることが必要だ。エルドアン氏は経済の原則を無視して利上げに反対するのをやめ、中央銀行の独立性を尊重しなければならない。状況次第では、国際通貨基金(IMF)に支援を要請することも考えるべきだ。

 リラ急落の根本にあるのは、米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げ路線と、それに伴う新興国からの資金引き揚げの動きだ。新興国に流入していた投資資金が米国に逆流し、トルコを含む新興国の通貨安とインフレが進行していた。そこにリラ急落が発生し、新興国全体の通貨下落を招く悪循環が起きた。

 再びリラが急落に転じれば、1990年代後半のアジア通貨危機のような新興国の通貨危機に発展する可能性があり、世界経済に大きな打撃を与える。FRBは9月に利上げをする見通しだが、慎重な判断をするよう望みたい。

 心配なのは新興国だけではない。スペインやイタリアなど欧州の金融機関は多額のトルコ向け債権を保有している。これらの債権が焦げ付くようなことがあれば、欧州発の金融危機に拡大する懸念も否定できない。

 トルコと米国は北大西洋条約機構(NATO)の同盟国でありながら、対立が泥沼化している。両国はこの問題が世界経済に及ぼす影響を認識し、和解の余地がないか模索してほしい。日本を含む主要国は、トルコと米国も参加する20カ国・地域(G20)の国際会議などの場で、関係修復を働き掛けるべきだ。

 主要国の金融当局には、協調して新興国の通貨動向や資金の流れを監視し、万一の場合に緊急の資金供給などができる態勢を整えておくよう求めたい。

2018年8月21日 無断転載禁止