地方大学・産業創生交付金/島根大の役割が大きい

 地方大学と地域産業の振興をセットにした計画を島根県が策定し、国の交付金支給に向けて申請した。島根大学と日立金属安来工場を中心とする産学官連携を図り、先端金属素材の拠点を目指す。

 東京一極集中が進む中で島根大の研究力を高め、地元の産業振興と併せ若者にとって魅力のある雇用機会を増やす狙い。島根県の計画が認められれば、県内で取り組まれてきた産学官連携事業としては最大規模となる。

 地方創生の一環で、10年の計画期間のうち交付金を含め、本年度から5年計画で総事業費60億円を見込む。

 研究開発などを支援する交付金獲得を巡って地方同士を競わせようとする国の意図が透けるが、地域貢献を掲げる島根大にとって特色を打ち出すチャンスとなる。大学の研究成果が地域に還元され、高度な専門技術を持った人材育成にも結び付けてほしい。

 日立金属安来工場がある安来市とその周辺には特殊鋼関連企業が集積し、そのクラスター(企業群)の中から航空機エンジン主要部材の共同受注組織として地元中小企業7社によるSUSANOOを立ち上げている。

 この産業の強みに島根大の研究力を通じて磨きをかけ、若者にとって魅力のある企業の育成に生かしていかなければならない。

 島根大では超耐熱合金研究の世界的な権威であるオックスフォード大学のロジャー・リード教授を所長に迎えて先端素材共同研究所を設置。民間企業の技術者らも交えて共同研究を進めるとともに、総合理工学部や大学院も金属工学に特化して再編する。松江工業高等専門学校とも人材育成で連携する。

 金属材料を評価する研究に島根大の強みがあり、研究成果を今後成長が見込まれる航空機向け部材やモーター関連産業に生かす。特に共同受注活動などを通じて技術水準を高めているSUSANOOとの連携を強めてほしい。

 この事業によって関連産業の生産額を5年間で550億円、雇用を550人増やす目標だが、どうすれば達成できるか具体的な道筋を示さなければならない。それが認定の条件ともなっている。

 地方大学の改革や地域経済振興の波及効果、雇用創出効果などが審査基準となり、本年度全国で10件程度の認定が見込まれている。応募自治体数は明らかにされていないが、国に相談した自治体数は30以上に上るという。

 自治体同士の競争となりそうだが、肝は島根大の魅力向上によって若者を増やし卒業後も地元に残ってもらうため、企業の受け入れ態勢を充実させることだ。人材育成と地元定着を軸とする大学と企業の協力関係が問われる。

 このタイプの連携事業では推進主体を明確にしておかなければ、掛け声倒れになりかねない。県が音頭を取るにしても島根大の役割は大きく、少子化が進む中で大学の競争力を高めなければならない。

 国立大学に対する運営交付金は毎年のように減額され、選ばれた研究に配分する競争的資金も有名大学に偏りがちだ。財務面からも地方大学の危機感は強まっている。

 競争的資金で島根大は苦戦しており、独自研究により地元産業界のニーズに応えることで存在感を示してほしい。

2018年8月26日 無断転載禁止