自民党総裁選/安倍政治の検証が不可欠

 安倍晋三首相が9月の自民党総裁選への立候補を表明、石破茂・元幹事長との一騎打ちという決戦の構図が固まった。一つの政党の党首選挙、投票できるのは自民党国会議員と党員・党友に限られているとはいえ、事実上の首相選びである。党員以外の国民にもよく見える候補者同士のオープンな討論の場を数多く設定してもらいたい。

 総裁選の最大の争点は、一言で表せば「安倍政治」への評価だ。森友、加計両学園問題や自衛隊の日報隠蔽(いんぺい)によって、政治や行政の公平・公正さに大きな疑義が生じ、信頼が揺らいだ。異論に耳を傾けず、数の力で法案を成立させていく強引な国会運営は、民主主義に肝心な合意形成の努力を怠っている。5年8カ月の長期政権のゆがみが表面化しているのだ。

 首相に挑む石破氏が「政治・行政の信頼回復100日プラン」を打ち出したのは、安倍政治に異を唱えたといえよう。これに対し、安倍首相は秋の臨時国会に党の憲法改正案提出を目指すと訴え、再び改憲スケジュールを持ち出すなど、「新たな国造り」を争点に据える意向だ。

 もちろん、憲法を含め、内政、外交などの政策課題を巡って論戦することも必要だろう。しかし、今後の針路に目を向ける前に、ここまでの安倍政権を検証する作業は欠かせない。森友、加計問題も、国会を欺いてまで隠そうとした真相が、依然として未解明のままでは、幕引きさせるわけにはいかないのである。

 政策面でも総括する絶好の機会だ。異次元の金融緩和で確かに各種経済指標は好転したが、財政再建の道は明らかに後退した。長期の大規模緩和の”副作用”も懸念され、アベノミクス三本の矢の一つである成長戦略も実を結んでいるとは言い難い。国民が望む持続可能な社会保障制度を構築したのか。看板に掲げた地方創生は進んでいるのか。国際協調に背を向けるトランプ米大統領の登場や朝鮮半島情勢の激変で「地球儀俯瞰(ふかん)外交」や安全保障政策はこのままでいいのか。検証のテーマは多岐にわたる。

 自民党総裁選の歴史をたどると、現職の首相(総裁)が敗北したのは1978年の福田赳夫氏だけ。99年、2003年には、当時の小渕恵三首相、小泉純一郎首相に対立候補が挑んだものの大敗しており、現職の「壁」は厚い。

 6年ぶりの選挙となるが、多くの派閥が早々と安倍首相の3選を支持。首相は国会議員の7割を固めたとされ、圧倒的に優位に立つ。だが、総裁候補の政見や政策を吟味もせずに1強にすり寄る光景は、自民党の活力の喪失を映し出しているのではないか。

 総裁選は自民党の衆参両院議員405人と、100万人余りの党員・党友の投票を405票に換算した合わせて810票で争われる。久しぶりに1票を投じる党員らに、そして国民に、丁々発止の討論の舞台をつくることは、開かれた政党の責務だ。

 非力な野党に乗じて国会の熟議は消え、自民党内も冷遇を恐れ、物言わぬ集団と化しつつある。そこに一石を投じた論客の石破氏に対して、安倍首相も「骨太の議論」を口にするなら逃げずに堂々と討論を受けてほしい。それが歴代最長の在任記録をうかがう宰相の度量でもある。

2018年8月27日 無断転載禁止