率先垂範形なし

 太平洋戦争で連合艦隊司令長官だった山本五十六は率先垂範を重んじ「やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ」と説いた。まずは、お手本を示さないと人は付いてこないと、統率の至言にする経営者は多い▼障害者雇用の法定雇用率で、国や自治体の雇用率が企業より0.3%高いのはこの率先垂範の姿勢から。内閣府の文章でうたっている。旗振り役として雇用率を達成するから民間も付いてきなさい、と言わんばかり▼水増し疑惑で厚労省が国機関の雇用状況を公表した。水増した職員数は3460人で、これまで公表してきた雇用障害者の半数に及ぶ。雇用率2.3%に対し、17機関の実態は0%台というありさまで、不適切な算入が横行していた。程度の差はあれ自治体でも確認されている▼要因について国は故意かどうかは確認できないとする。気になる数字は、大半の省庁の調査前雇用率が達成ぎりぎりの2.3~2.4%だったこと。故意を否定した厚労省は2.76%。これでは帳尻合わせがあると勘ぐられても仕方がない▼民間は未達成なら納付金を納めるのに公務部門はペナルティーがないことも、「さじ加減」を助長させてきた背景にあるようだ。何とも脇の甘い率先垂範だった▼山本五十六の冒頭の一節は、影響を受けた江戸中期の米沢藩主・上杉鷹山の言葉が下敷き。鷹山は「なせば成る、なさねば成らぬ、何事も」と遺(のこ)した。障害者雇用に無頓着だったお役人には、さぞ耳が痛い格言だろう。(泰)

2018年8月29日 無断転載禁止