子どもの自殺/命を守る対策に全力を

 夏休みが終わる8月末から9月初めに子どもの自殺が急増する。統計上突出するのは例年、多くの学校が始まる9月1日。学校再開に関連があることは明らかで、命を守る対策に全力を注ぐべきだ。

 それだけ学校が大きなストレスになっている。生きるのがつらくて希望が見えないから逃げたくなる。いじめや人間関係の苦しさ、成績の評価から逃れたい。その究極の逃げ場が自殺だ。

 死ぬぐらいなら無理に学校に行かなくてもいい、と大人は思う。だが、子どもは親や先生に、なかなか本音を話せない。自殺して初めて「そんなにつらかったのか」と知ることになる。

 親にも先生にも「本当は学校に行ってほしい」という願いがある。子どもはその期待に応えようとする。「親の目」や「世間体」を気にするように育っているためだ。

 「同調圧力」が強いのが日本社会だ。大人も子どもも「みんなと同じでないといけない」と感じさせられてしまう。個性のある子はいじめられやすい。みんなと同じでないからだ。

 世界では、多くの人たちはそんなことは考えていない。国際調査で、米国や中国に比べて日本の子どもの自己肯定感が極端に低いのは、そうした影響もあるのではないか。

 友人関係の問題も、宿題ができないことも、そうたいしたことじゃない。成績が悪くても、どんな才能があるかなんて、いろんなことをやってみないと分からない。子どもたちにそう伝えるべきだ。

 「周りなんか気にする必要はない。一番大事なのは自分だ」と子どもたちに教えよう。そして「つらいなら、逃げる方法はいくらでもある」と。保健室登校やフリースクールという手もある。

 日本では以前、年間3万人以上が自殺し、対策が進んだ。警察庁によると、昨年の自殺者数は2万1321人。8年連続して減ったが、残念なことに未成年者は前年より増えて567人だった。子どもの生きづらさが強まっているのかもしれない。

 交通事故の年間死者数は、ピーク時は1万6千人を超えていたが、昨年は4千人を切った。本気で取り組めば、子どもの自殺も減るはずだ。どうしたらいいのか、親も先生も、教育委員会も、文部科学省も知恵を絞る必要がある。

 一つのヒントは、会員制交流サイト(SNS)だ。無料通信アプリLINE(ライン)によるいじめ相談が各地に広がる。いじめにも使われるSNSにはこんな使い方もある、と知らせたい。相談電話はなかなかつながらないが、子どもはLINEなら気軽に相談できる。もっと増やしたい。

 さらに必要なのは、子どもを見て声を掛けてくれる大人の存在だ。一人でいい。苦しい思いを打ち明けられる大人がいれば、命は救われる。

 親は、あまり自分の価値観を押し付けない方がいい。子どもには子どもの人生がある。先生は、自分の言葉が良くも悪くも大きな影響力を持つと自覚してほしい。忙しくて大変だろうが、気になる子に優しい一言を忘れないでほしい。

 つらい状況の子どもには「頑張らなくていいから、もう少しだけ逃げ道を探そう」と言いたい。

2018年8月30日 無断転載禁止