新たな在留資格/定着も見据えた議論を

 外国人労働者の受け入れ拡大に向け来年4月から創設する新たな在留資格について、政府は早くも対象とする業種を広げる検討を進めている。当初は人手不足が深刻な農業、建設、造船、宿泊、介護の5分野を念頭に置いていたが、経済界や自治体からさらなる拡大を求める声が上がり、製造業や水産業、食品加工業などを加えるという。

 厚生労働省のまとめでは、日本で働く外国人労働者は2017年10月時点で128万人。前年同期よりも19万人増え、過去最高を更新した。12年の68万人から倍増した計算になる。単純労働への就労は認められていないが、実際には技能実習生や留学生のアルバイトが多くを占めている。

 新制度の下では単純労働が事実上解禁され、最長5年の技能実習を終えた外国人は新資格を取得すると、さらに5年の滞在が認められ、合わせて10年間、日本で働くことができる仕組みだ。技能実習制度につぎ木をする形を取り、政府は20年の東京五輪・パラリンピックを挟んで数十万人規模の受け入れを見込む。

 しかし実習生らは自由に転職することも、家族を呼び寄せることもできない。低賃金や給与不払い、長時間労働といった問題も後を絶たない。外国人の本格的な活用にかじを切るなら、人権や待遇の保障、日本社会への定着も見据えた議論が必要だろう。

 政府は6月、骨太方針で新在留資格の創設を経済対策の柱に据えた。各方面から歓迎と要望の声が相次いだ。7月下旬の全国知事会議では、自動車を中心に製造業が盛んな愛知県の大村秀章知事が「製造業を新たな受け入れ業種として認めていただく必要がある」と力説した。

 新資格は業界ごとの技能試験や日本語能力試験などで一定の水準を満たすことが要件。技能実習を3年以上経験した場合は試験が免除される。企業は、より長く働ける外国人を確保でき、メリットは大きい。ただ移民に強く反対する保守派への配慮から、家族の帯同は認めていない。

 企業や農家で学んだ技術を母国に持ち帰り、役立ててもらうという「国際貢献」をうたう技能実習制度は1993年に導入され、外国人労働者の受け皿になってきた。しかし実際は実習生が「安価な労働力」とみなされ、酷使されてきたことは否定できない。

 厚労省によると、実習生が昨年働いた事業所5966カ所を労働基準監督署などが監督指導。約7割の4226カ所で違法残業や安全配慮を欠いた労働安全衛生法違反、残業代不払いなどがあった。特に悪質で書類送検された縫製会社はフルタイムで働く実習生に最低賃金を下回る月6万円の基本給しか支払わず、労使協定を結ばないまま違法残業をさせていた。

 労災による死亡と認定された実習生が14~16年度で計22人に上るという統計もある。「現代の奴隷制」ともいわれるこの実習制度を温存し、新制度はつくられる。政府は昨年11月、実習制度の在留期間を3年から5年に延長したばかりだが、それをまた10年にせざるを得ないほど、人手不足は深刻度を増している。

 ただ韓国や台湾との人材の奪い合いもあり、外国人労働者をまともに受け入れる検討をしないと、いずれ日本は外国人から見限られるだろう。

2018年8月31日 無断転載禁止