本気の観光振興

 観光振興という言葉は悪女のようだ。魅力的だから追い求めるが、思うようにいかない。諦めかけると手招きをされ、また追い掛ける。膨大な時間と金が費やされていく▼小泉構造改革後の地方再生策として多くの自治体、企業などが観光産業に着目した。業種・業者の裾野が広く、経済波及効果が高いとされるからだ。山陰両県でも各地で振興計画・団体が生まれ一定の成果を得たが、中核的な産業には育っていない▼明確な戦略と主体性を持ち、振興策を実践するプレーヤーが少ない。官民や地域間の連携は必要だが、責任の所在があいまいな構図とも言える。強い「個」が増えないと連携効果が高まらない▼「個」を育てる策が始動した。観光振興に貢献した島根県内の団体・個人を顕彰する観光大賞が創設され、初代大賞に、障害者や高齢者の旅行をサポートする松江市のNPO法人・プロジェクトゆうあいが選ばれた。賞金100万円が活動の充実に充てられる▼賞の生みの親はNPO法人・松江ツーリズム研究会。小泉八雲の怪談に登場するスポットを夜間にガイド付きで巡る「松江ゴーストツアー」など独自の企画を次々と実現した。採算性より旅行者の満足度にこだわった。指定管理も含めた事業収益を賞金として地域に還元する。本気で観光振興を志しているからできる▼大賞は毎年贈られる。研究会の「本気」という遺伝子が地域で受け継がれ、旅行者本位の観光施策が広がるといい。悪女も本気で振り向いてくれるのかもしれない。(杉)

2018年8月31日 無断転載禁止