101回目も避難した方がいい

 10万5千人余りが犠牲になった関東大震災から95年目の「防災の日」を迎えた。その後も阪神・淡路大震災、東日本大震災など大規模な災害は続いている。毎年のように豪雨や台風が襲い、火山の噴火にも見舞われる▼災害が起きるたびに防波堤や護岸が強化され、建物の耐震化も進められる。大雨や土砂災害などの警報や避難指示・勧告の伝達も昔に比べれば、迅速になった。それでも命や家を失う人はなくならない▼約800年前の随筆『方丈記』で鴨長明は、そんな「人と栖(すみか)」の無常をつづった。平安京でわずか8年の間に目にした大火、辻風(つむじ風)、飢饉(ききん)と大地震が、当時は不思議な災厄に映ったようだ▼長明の時代はまだ、神や仏に祈ったり、災害を「お告げ」ととらえて元号を改めたりするしかなかった。それを思うと、今は防災面のハード整備は格段に進んだ。情報収集や安否確認は、ラジオさえなかった関東大震災の頃に比べてもはるかに容易になった▼が、堤防が高くなるほど「大丈夫だろう」と油断して、命を守る意識の堤防は低くなる。情報収集が手軽になっても、異変に直面すると「大丈夫だ」と現実を過小評価する「正常性バイアス」に陥りやすい▼7月の西日本豪雨でも、自治体が出した避難指示や勧告に従って実際に避難した人が1割にも満たない市や町が多かった。どんなにハード整備をしても、自然が相手の災害では「想定外」は起こり得る。空振りが100回続いても、101回目も避難した方がいい。(己)

2018年9月1日 無断転載禁止