防衛予算/厳格な精査が求められる

 防衛省は2019年度予算の概算要求で、過去最大となる5兆2986億円を計上した。18年度当初予算と比べて2.1%増。第2次安倍政権下で7年連続の増加となる。このうち米軍再編関連経費を除くと、7.2%増という大幅な伸びだ。

 防衛省は「厳しい安全保障環境の中、現実に真正面から向き合った防衛体制を構築する」と説明する。あらゆる事態を想定して体制を強化すべきだという防衛当局の理屈だろう。しかし厳しい財政事情の下、費用対効果を考慮した厳格な精査が行われなければならない。安保環境の情勢認識も冷静な議論が必要で、野放図な増大は認められない。

 概算要求は、ミサイル対処での地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」2基の取得関連費2352億円やF35A最新鋭ステルス戦闘機、長距離巡航ミサイルなどの経費を盛り込んだ。

 だが議論すべき問題点は多い。まず安保環境の認識だ。防衛省が公表した18年版の防衛白書は、北朝鮮の核・ミサイルに関して「これまでにない重大かつ差し迫った脅威」と記述、「新たな段階の脅威」とした17年版白書より表現を強めた。昨年9月に北朝鮮が実施した核実験を受けて引き上げたものだ。

 しかしその後、北朝鮮を巡る情勢は大きく変動している。白書は今年6月の米朝首脳会談に関し、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長が「非核化の意思を文書で明確に約束した意義は大きい」と言及しながらも、具体的な行動を見極める必要があるとして、脅威の認識を変えていない。

 中国に関しても「日本を含む地域・国際社会の安保上の強い懸念」と指摘した。日中は関係改善の流れにあり、不測の衝突を回避する「海空連絡メカニズム」の運用開始にも合意している。

 これらの分析は妥当なのか。脅威の強調は、巨額の経費に疑問符が付くイージス・アショアなどの導入に向けた理由付けのためではないか。

 安倍晋三首相は、年末に予定する防衛力整備の指針「防衛計画の大綱」の5年ぶりの見直しを議論する有識者懇談会で「わが国の安保環境は格段に速いスピードで厳しさと不確実性を増している」と述べた。だが安保環境は軍事的な側面だけではなく、外交面も含めて考えるべきだ。

 二つ目は、装備品の内容だ。自民党は他国のミサイル発射基地をたたく「敵基地反撃能力」の保有検討を求めている。概算要求には、敵の射程圏外から反撃できる長距離巡航ミサイルなどが盛り込まれており、野党は安保政策の基本である「専守防衛」を逸脱すると批判している。

 米政府の対外有償軍事援助(FMS)に基づく、いわば「言い値」での調達も過去最大の7千億円弱となる。経費の縮減に取り組むべきだ。

 大幅な予算要求増額の背景には、年末の新防衛大綱と今後5年間の「中期防衛力整備計画(中期防)」の策定をにらみ、防衛力強化を既定路線とする狙いがうかがえる。新大綱では陸海空に加えて、宇宙やサイバー、電磁波など新たな領域への横断的対応を打ち出す方針だ。サイバー攻撃などへの対処は必須だろうが、予算編成が陸海空の縦割りになっていないか。硬直化の見直しも必要だ。

2018年9月2日 無断転載禁止