辺野古承認の撤回/不信の対立断つ対話を

 沖縄県は米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古への移設を巡り、前知事が許可した辺野古沿岸部での埋め立ての承認を撤回した。

 撤回によって、移設工事は即時に止まるため、政府は効力停止の申し立てなど法的な対抗措置を取る方針だ。政府と県は再び法廷闘争に入る。

 撤回の方針は、8月に急逝した翁長雄志知事が亡くなる直前の7月末に表明していた。後継を決める県知事選は9月30日に投開票される。辺野古移設の是非がやはり最大の争点となろう。

 承認の撤回は、本来ならば選挙後に新しい知事が判断すべきだろう。だが、政府は埋め立ての土砂投入を8月17日に行うと通知。荒天を理由に延期したが、投入に踏み切る構えは崩していない。

 埋め立て海域の原状回復が不可能となる土砂の投入を止めるには、投入前に撤回する必要があった。政府と県が相手の出方に不信感を募らせた結果の事態と言えよう。

 県知事選は、翁長氏の後継として辺野古移設反対を訴える自由党衆院議員の玉城デニー氏と、安倍政権が支援する前宜野湾市長、佐喜真淳氏との事実上の一騎打ちとなる。激しい選挙戦が想定され、どちらが当選してもしこりが残るだろう。

 安全保障政策は国の専管事項だとしても、県民を分断する形で基地建設を進めていいのか。不信の対立を断つには安保政策上、辺野古移設が本当に必要なのかを再検証し、政府と県が改めて対話を重ねるべきだ。打開の道を探るよう、政府に求めたい。

 沖縄県は、翁長氏の方針表明後、防衛省沖縄防衛局から聴聞を行い報告書をまとめた。謝花喜一郎副知事は、防衛局の工事に違反行為があり、行政指導をしても是正しなかったと指摘。「違法状態を放置できないとの行政の原理の観点」から判断したと説明した。

 防衛局は再反論の機会を求めるとともに、知事選後まで撤回を延期するよう要請していたが、土砂投入の構えを取り続けたのでは県の不信を解くことはできまい。

 知事選に出馬を表明した玉城氏は「翁長氏の遺志を引き継ぐ」と強調、県による承認撤回も支持するとしている。保守と革新の壁を越えた「オール沖縄」の枠組みをアピールするが、立憲民主や共産、社民など野党各党が支援する態勢は革新色が強くなるだろう。元々自民党幹部だった翁長氏のように、保守層の支持を得られるかが課題だ。

 普天間飛行場のある宜野湾市の市長を務めた佐喜真氏は、自民党と日本維新の会に加え、前回知事選は自主投票だった公明党が推薦する態勢だ。「普天間飛行場の危険性除去と早期返還」を訴え、国との関係改善を主張する。ただ辺野古移設への賛否は明確にしていない。「争点隠し」の戦略ではないか。

 普天間飛行場について政府は、2019年2月までの運用停止を県に約束している。早期返還は県民の一致した要求で、その先の辺野古移設への賛否を明確にすべきだ。

 選挙戦で、与野党は国政選挙並みの支援態勢を取る構えだ。だが問われるのは沖縄の将来像をどう描くのかである。何よりも尊重すべきは県民の選択であり、各党には節度ある対応を求めたい。

2018年9月4日 無断転載禁止