世事抄録 月と火星のコラボ

 平成最後の夏は、天変地異の連続であった。7月の西日本豪雨は広範囲で甚大な被害をもたらした。間髪を入れず、あいさつもせずに梅雨が去り、その後は記録的な猛暑。いいかげんにしろと叫びたくなった8月中旬は、台風が連続発生した。そんな中、一服の清涼剤となる自然現象に遭遇した。7月末、皆既月食による天体ショーだ。

 午前3時、2階の窓際に望遠鏡と椅子を設置。熟睡中の妻を起こし、南西の空を並んで見上げた。若い時分なら絵になる光景だったろう。雲間に老眼を凝らしていると、やがて満月が火星を脇に従え現れた。

 火星は15年ぶりに地球に大接近中で、いつもより大きく、燦然(さんぜん)と輝いていた。同3時24分。予告通り、月が欠け始めた。

 昔、コロンブスが遭難してたどり着いた島の住民に「月を隠す」と、皆既月食を利用して驚かせたという話がある。遠い昔から分刻みでその時を知る術があり、この現象を共有した古(いにしえ)の人々に、思いをはせた。

 月食のクライマックス、暗褐色の月は、悲しみと怒りの塊のようで、災害の続く地球と人類に何かを訴えるように見えた。災害に月と火星のコラボレーションショーにと、人間は自然には勝てないとあらためて胸に刻んだ夏。

 平成最後の秋は、「天高く馬肥ゆる秋」であるよう願う。

 (浜田市・清造)

2018年9月6日 無断転載禁止