アキのKEIルポ 過去断ち切る強さ 次戦も

 彼と対戦する時は、決勝戦を思い出す-。準々決勝のマリン・チリッチとの戦いを控えた会見で、錦織はそのように言っていた。

 「決勝戦」とは4年前の、ニューヨークでの頂上決戦のこと。テニス選手は同じ相手と幾度も対戦を重ねるものだから、いちいち過去にとらわれていては、きりがない。ましてや錦織は、その選手と対戦した事実すら忘れていることもあるほどだが、チリッチは数少ない、錦織に過去を想起させる存在だという。

 今回の準々決勝でも、第1セットを奪われ、第2セットでもリードされた時、彼の頭によぎったのは4年前の苦い記憶。「自分のミスが早く、相手の攻撃を止められない。あの時と一緒だ…」

 だがその過去を払拭(ふっしょく)すべく、彼はラケットを振り切ることを自分に言い聞かせた。悪夢は時に選手を緊張で縛り付け、思考を混濁させるが、この日の錦織は敗戦を教訓とし、勝利への糧とした。

 次に対戦するジョコビッチに、錦織は2勝14敗と大きく負け越している。試合前には「いつもと違う感覚」を抱く、数少ない相手である。ジョコビッチは「彼の早いプレーのリズムが、自分の集中力を高めてくれる」と、錦織との相性の良さを否定しない。

 今季早くも4度目の対戦。チリッチ戦で見せた過去を断ち切る心の強さが、次の試合でも鍵となる。

 (フリーライター・内田暁)

2018年9月7日 無断転載禁止