自民党総裁選告示/互いに自省伴う論争を

 自民党の総裁選が告示された。連続3選を目指す安倍晋三首相に石破茂元幹事長が挑む一騎打ちの構図だ。2012年以来の選挙戦だが、安倍首相が期間中に外遊する上、告示前日に発生した北海道地震を受けて両陣営が3日間、選挙活動を自粛するため、論戦の時間が極端に短い異例の選挙戦になった。

 5派閥の支持を受けた安倍首相が党所属国会議員の8割以上を押さえるなど優勢で「勝敗が決まっている消化試合」との声さえ出ている。しかし、現職が立候補する与党の党首選には、論戦を通じて政権を自己総括するという側面もある。15年の前回は安倍首相の無投票再選で、安倍政権にとってはこの総裁選がその初の機会である。

 特に安倍政権下では、財務省の決裁文書改ざんなど民主主義を根底から揺るがすような不祥事が続発し、7月の通常国会閉幕に当たって大島理森衆院議長が所感で行政府と立法府に「深い自省」を促す事態となった。

 挑戦者である石破氏が政権運営の在り方を争点とする構えであることから安倍首相が受け身となる可能性もあるが、石破氏も党のナンバー2の幹事長、地方創生担当相として政権を中枢で担っていた経緯がある。安倍、石破両氏ともに自らを省みた上で論争に臨まなければならない。

 言うまでもなく論争のテーマは政権運営だけではない。いまだ目標が達成できていないアベノミクスも厳しく検証すべきだ。石破氏が閣僚として所掌し選挙戦でも掲げる地方創生は、アベノミクスと密接な関係にある。

 自衛隊をどう位置付けるかを中心に持論が対立する憲法改正問題も意見を戦わせる必要がある。

 20日の投開票日まで選挙期間は2週間だが、6日に北海道で震度7の地震が発生し、両陣営は9日まで選挙活動を見合わせる。10~13日は当初から安倍首相がロシアを訪問することが決まっていた。

 このため、7日行う予定だった候補者による所見発表演説会と共同記者会見は10日に延期され、8、9両日に組み込まれていた日本記者クラブと党青年局・女性局がそれぞれ主催する討論会は安倍首相の帰国後になった。

 もともと討論会、合同の街頭演説も12年に比べて少なかったことから石破陣営は「党員軽視だ」とする質問書を総裁選挙管理委員会に提出していた。安倍政権をどう総括し、次の総裁を誰に任すかという意義から見ても期間が短く論争の機会も少なすぎる。

 今月下旬には首相の外遊が予定されているが、石破氏が「災害対応が第一だが、国の将来についての論戦をきちんと行うことと両立させなければならない」と主張したように延期するのが筋だった。

 安倍首相は景気回復や対米外交の実績を前面に出すとみられる。このところ首相は国会論戦などで野党の質問に正面から応じない場面が増えている。挑戦を受ける側が一方的に責められるのでは議論は深まらないが、問われたことに誠実に答えることが大前提だ。

 石破氏は森友、加計学園問題を念頭に「官邸の信頼回復」を掲げ、政策決定プロセスの透明化を求める構えだが、現状をどう改めるか具体策を提示することが必要だ。

2018年9月8日 無断転載禁止