しあわせ色の風

 「絵はうまい、下手じゃない。佐々木の絵は日本一下手かもしれない。だけど佐々木にしか描けない絵だ」。江津市の童画家、故佐々木恵未さんが女子大生時代に夜間通っていた東京のデザイン学校で講師から言われた言葉だ▼「わたしの原点」という記事の取材で本人から聞いた。「原点」となった講師は絵本「こんなこいるかな」で知られる童画家の有賀忍さんで、2時間の授業が佐々木さんの絵を褒めることだけに費やされたこともあったという。8年も前の取材だったが、うらやましい師弟関係はずっと印象に残っていた▼その有賀さんの話をこの夏、聞くことができた。安来市の加納美術館で17日まで開かれている佐々木さん没後4年の作品展「しあわせ色の風」に駆け付けて講演した▼佐々木君のすごさはオリジナリティーにある。キーワードは幸福感とユーモア。細部まで描き込んだ絵は山ほどあるが、草一本までめでるように描く絵は他にない。会話や音楽が聞こえてきそう…。熱く語る恩師の言葉は以前に聞いていた通りの「べた褒め」だった▼会場には初期から59歳で亡くなるまでの作品の原画が並ぶ。島根県子育てパスポート「こっころ」や本紙連載「あったか家族」など広く親しまれた作品も多い。地元の大元神楽を題材にした未完の絵本を見ると、無念さが募る▼有賀さんは色彩感覚の豊かさも称賛した。おそらくピンクの使い手としてはナンバーワンである、と。原画でなければ伝わらない魅力を会場で感じてもらいたい。(輔)

2018年9月12日 無断転載禁止