レッツ連歌(下房桃菴)・9月13日付

(挿絵・Azu)
 ただのオッツァンかと思ってた

お腹出たレジェント始球投げは投げ

            (兵庫・明石)折田 小枝

戦争をやっと語ってくれたジジ (益田)石田 三章

伏線に後で気がつくミステリー (出雲)野村たまえ

放浪の天才画家と後で知り   (益田)石川アキオ

被災地を見回っている安倍首相 (松江)持田 高行

知事さんはいつもニコニコ高ぶらず

               (松江)庄司  豊

経験が迷子見つけたボランティア(益田)可部 章二

テレビにも出ているらしい郷土史家

               (江津)花田 美昭

夜が更けりゃ屋根から屋根へ跳び回り

               (出雲)行長 好友

落研(おちけん)の経験生かす老人会    (松江)花井 寛子

なぜかしら道行くみながお辞儀して

               (松江)須山 吉雄

先生も教えてくれぬ金次郎   (益田)石田 三章

襖絵をお礼に描いて行った人  (米子)板垣スエ子

官邸を出入りする人見張ってる (益田)吉川 洋子

理事長の御前であるぞ頭(ず)が高い (出雲)平井 悦子

家事育児なんでもこなす社長さん(出雲)放ヒサユキ

父ですと彼女に言われ腰抜かし

            (長野・大町)金原 怜子

帰りぎわ名刺渡され正座する

            (沖縄・石垣)多胡 克己

菅笠で畑たがやす副将軍    (益田)石川アキオ

ええ根性しとるやんけと睨まれて(松江)安東 和実

そういえばとっつきにくい顔してる

               (浜田)滝本 洋子

爺さんの葬儀で知事の弔辞聞き (松江)澄川 克治

赤ちゃんの私を置いて逃げた人 (安来)根来 正幸

校長は隣の町で玉を打ち    (江津)花田 美昭

化粧すりゃほれぼれとする女形 (雲南)妹尾 福子

自画像はゴッホが描いた文化財 (米子)板垣スエ子

三味線を持てばみごとな撥さばき(出雲)栗田  枝

           ◇

 たまえさんの句は、一見平凡なようで、よくできております。なるほど「伏線」というのは「後で気がつく」もので、はじめから分かっていれば「伏線」とはいえません。そこがおもしろいと、私は思いました。

 悦子さんの「理事長」は、「ご老公」であっても、十分みごとな秀作でした。が、テレビの時代劇に今の話題を重ね合わせたことで、さらにみごとな名作となりました。

 学校の先生は、なにかと気苦労の多いもの。パチンコするにも場所を選ばなきゃならない。それはまだいいとして、むかしむかし、「思わぬとこで先生に会い」という前句に、「劇場の一番前の禿頭」と付けた、忘れられない傑作もありました。

           ◇

 地元のかたはよくご存じのことですが、毎年10月15日、出雲大社の国(こく)造(そう)みずから、松江市八雲町にある熊野大社へ、火(ひ)鑚(きり)臼(うす)と火(ひ)鑚(きり)杵(ぎね)を借り受けに行く。その際、大きな立派な四角い餅を奉納するのですが、応対に出る熊野大社の神官は、形が悪いとか、色がよくないとか、まあ、さまざまに難癖をつけて、国造を困らせる―、という世にも不思議な神事があります。その神官の名を「亀太夫」といい、神事を「亀太夫神事」と申します。今回はこれを前句にお借りしました。

  なんじゃかんじゃと言う亀太夫

 もっとも実をいえば、亀太夫はどこにでもおりまして、かくいう我が家にも一人、「女亀太夫」がおいでになります。

 付句は五七五の長句。

               (島根大名誉教授)

2018年9月13日 無断転載禁止

こども新聞