川漁師 天野さん制作協力 宮廻さん代表作「水花火」江津で展示

展示会場で会話する天野勝則さん(左)と宮廻正明さん
 島根県江津市桜江町川戸の今井美術館で開催されている東京芸術大名誉教授、宮廻正明さん(67)=松江市出身=の個展「宮廻正明展~無極~」に、地元の川漁師、天野勝則さん(79)=江津市桜江町後山=が制作協力した作品「水花火」(1998年作)が展示されている。現役漁師に漁の様子を聞きながらイマジネーションを膨らませて仕上げた作品は、美術ファンを魅了する宮廻さんの代表作の一つになっている。

 今井美術館の今井順子前館長(故人)の依頼で、桜江町を舞台にした作品制作の構想を温めていた宮廻さんは、取材に訪れた江の川で漁師が投網を投げる姿を偶然見かけ、モチーフに決めた。

 制作にあたり、長年アユやウナギ漁などに従事し、川を知り尽くした天野さんが協力した。スケッチブックを手に船に乗った宮廻さんに丸一日付き添い、投網を繰り返し投げるモデル役の漁師の投入法や船の操船法を解説し、参考にしてもらったという。

 出来上がった作品は、大きな円を描いて水面に広がる投網を花火になぞらえ「水花火」と名付けた。静的なものが多い日本画の中で、動くものの一瞬をとらえた大作(縦1.8メートル、横3.6メートル)は話題を集め、「今の自分があるのもこの作品があったから」(宮廻さん)という代表作となった。

 一方、この出会いから、天野さんは冬場などに絵画を本格的に描くようになった。アユの遡上や幼少期の夏場の川遊び、夜の川で月を仰ぎ見ながら豊漁を感謝する漁師などをテーマにした作品は専門家らの評価が高く、地元で個展を開いたほか、カンヌ国際芸術祭や欧州国際芸術祭で入賞し、画集も出版した。

 天野さんは「絵には、今までの自分の人生が詰め込んである」と言い、「漁師だったからこそ、宮廻さんをはじめとするさまざまな出会いに恵まれた」と感慨深そうに語った。

 宮廻正明展は24日まで。会期中は無休で、開館時間は午前10時から午後4時。料金は一般が千円、学生及び18歳以下は無料。

2018年9月15日 無断転載禁止