世事抄録 30秒の観光案内

ご縁があって、東京で開催される島根県の小規模講演会の運営を引き受けている。「島根でお薦めの場所は」「飲み屋は」「娘が行くの。安全でおいしい店は」と尋ねられることも多い。会場での役割は、入退場の安全な誘導と心地よく過ごしていただくことだ。観光案内に時間を割くことはできない。でも、あとでとか、パンフレットを渡すだけでは薄情な気がする。そこで思いついたのが30秒案内だ。

 「エレベーターピッチ」をご存じだろうか。シリコンバレーで生まれたプレゼン方法で、起業家がエレベーターの中で出会った投資家に、目的の階に着く短時間の間に事業の要点を伝え投資につなげる30秒の会話術だ。要は伝えることでなく、投資家が価値を理解し信頼関係を結べることだ。

 これをビジネスの現場で応用した。もちろん状況や相手によって内容も変える。講演会場では30秒の半分で、誰が、どんな目的で、何を求めているかの質問に当て、15秒で紹介する。ポイントは情報の提供ではない。私を信じ、島根を好きになり、訪ねる気持ちになることだ。そのために心に響く簡潔な文を準備し、心地よい講演会の運営を心掛ける。

 さてどこまで伝わったか、先様が知るのみだが、「行ったわよ」「今度はあなたの故郷に行くわ」と声をかけられると、ビジネス時のお客さまからご発注を頂いたようにうれしくなる。

(埼玉県在住、島根県奥出雲町出身・鬼灯)

2018年10月4日 無断転載禁止