「不良長寿」

 脳梗塞にはゴールデンタイムというのがあるそうだ。発症してから3時間以内に治療すれば後遺症が軽くて済む。松江市玉湯町出身で免疫学者の奥村康・順天堂大特任教授から聞いた▼ネットで調べたら、発症から4時間半以内なら血栓を溶かす治療法が有効とある。「3時間以内ならもっとゴールデン」という意味を込めたのではないか▼有名人を例に挙げれば、ゴールデンタイムに間に合ったのがサッカー日本代表のオシム元監督、遅れてしまったのがミスタープロ野球、長嶋茂雄氏。オシム氏は倒れてから2時間以内に病院に運ばれたが、長嶋氏の場合は5時間以上たっていた▼「2人の予後を見れば歴然。ほとんど後遺症がなく再びサッカーができるまで回復しているオシム氏に比べ、長嶋氏は…」と奥村氏。時間との勝負といわれる脳梗塞は、倒れたときに本人に代わって救急車を呼べる人がそばにいたかどうかが運命の分かれ目となる▼古里の公民館で講演した奥村氏は、世にあふれる健康常識に挑戦する「反逆翁」のようなところがある。あれは駄目、これもいけないと小うるさい健康常識はうそだらけで、真面目は寿命を縮めると喝破(かっぱ)。不老長寿ならぬ不良長寿を勧める▼健康常識の代表格である禁煙にも容赦ない。「最近はたばこの害を言わないと医学界から追放される」としながらも「たばこは脳にいい。著名なアスリートにもヘビースモーカーは少なくない」。それなら喫煙と脳梗塞の関係はどうですか、と聞いてみたくなった。(前)

2018年10月11日 無断転載禁止