65年ぶりに「大江山」復活 浜田・長沢社中

浜田市内の秋祭りで、復活させた「大江山」を披露する石見神楽長沢社中のメンバー
 島根県浜田市長沢町を拠点に活動する石見神楽長沢社中(長冨幸男代表)が、特に人気が高い演目「大江山」を同社中としては約65年ぶりに復活させた。「昔のままの舞」をテーマに、若いメンバーが中心となり、登場人物などに独自の設定が施されたシナリオを忠実に再現。秋祭りの奉納神楽で披露し、約150年続く同社中の歴史に新たなページを刻んでいる。

 「大江山」は、丹波の国の大江山に立てこもり、悪逆非道な行為を繰り返す「酒呑童子(しゅてんどうじ)」を、山伏に変装した武将「源頼光(みなもとのよりみつ)」が討ち取る物語。童子と頼光の鬼気迫る問答や、クモの糸に見立てた和紙を用いた派手な演出など、社中ごとに施す趣向も見どころだ。

 長沢社中の大江山は、狩人が酒呑童子に捕らわれた姫「時和木(ときわぎ)」と出会うことで童子の存在が明らかになる場面から始まる。頼光四天王の1人として知られる渡辺綱(わたなべのつな)が、台本で「随臣」と記されている点や、坂田金時が登場しない点など、おなじみの登場人物の設定も異なる。

 同社中で最後に上演したのは、1950年ごろと伝わる。70年代に長冨代表(72)らが復活を目指し、年配者から口上を聞き取ったこともあったが、人員不足などで断念した。

 若いメンバーの増加に伴って復活を検討していたところ、昨秋、京都造形芸術大(京都市)の学生らでつくる「京都瓜生山舞子連中」から、京都ゆかりの演目でもある大江山の上演依頼を受けたことで機運が一層高まった。

 川神丈尚さん(28)ら20代のメンバーが中心となり、山伏が着用する薄紫色の鈴懸衣(すずかけごろも)やカツラ、頭襟(ときん)、金剛杖といった小道具を用意し、鬼の面も4枚新調。ノートに書き写された口上を参考に稽古を重ね、今年3月の京都公演にこぎ着けた。

 4月には地元の長沢神社で初披露し、住民から喝采を浴びた。長冨代表は「若いメンバーたちのおかげで再び披露でき、夢のようだ。代表演目の一つとして次世代に伝えていってほしい」と話した。

2018年10月25日 無断転載禁止