番外編 「北海道」視察 (下)光と影

広域連携で観光に効果/在来線維持が重い課題

新函館北斗駅のホームに入る北海道新幹線「はやぶさ」。新幹線は観光面で効果をもたらしている=10月10日、北海道北斗市
 JR函館駅(北海道函館市)から在来線に乗り、北へ約20分。田園風景が広がる中、真新しい大きな建物が姿を現した。日本最北端の新幹線駅とされる北海道新幹線の新函館北斗駅(北斗市)。10月10日、降りたった島根、鳥取県両経済同友会のメンバーは、キャリーケースを手にした観光客の多さに目を奪われた。

 新幹線の開業効果は観光面で見て取れる。日本政策投資銀行北海道支店によると、利用者の6割が観光目的で、他の新幹線と比べ観光の比率が高いという。現に函館市は、開業初年の2016年の観光入り込み客数が過去最高の561万人を記録。17年は524万人に落ちたものの、開業前より高い水準を保っており、函館商工会議所の久保俊幸会頭(61)は「人口減少が進む中、地元経済への効果は大きい」と強調する。

 30年度末の札幌駅への延伸を控え、函館市は開業効果を最大限に広げるため、新幹線で直結する東北地方との連携を強化する。東京-仙台-青森-函館-札幌を結ぶ「東日本ゴールデンルート」の確立など、20年の東京五輪・パラリンピックに向けて増加が見込まれる訪日外国人客らの誘致に力を入れる方針。函館市の大泉潤観光部長(52)は「観光客のニーズが多様化する中、単独では効果が限られる。広域連携の重要性はさらに高まる」と指摘する。


赤字路線の経営

 だが、光があれば影もある。北海道新幹線の開業により、JR北海道から赤字路線の並行在来線の運行を引き継いだ第三セクターは経営に苦しむ。

 旧江差線の五稜郭-木古内駅間37・8キロを運行する「道南いさりび鉄道」(本社・函館市)。初期投資を含めて開業後10年間で、沿線の函館、北斗両市と木古内町、北海道を含めた4自治体が担う赤字補てん額を約23億円と見込む。

 JR時代も赤字だっただけに運賃値上げは避けられず、16年度に72万6千人だった利用者は、17年度は68万人に低下。その結果、17年度は約2億円の経常損失を計上し、斉藤仁総務課長は「観光列車の運行などで対策を打っているが、今後の人口減少を考えれば、さらに厳しい経営が続く」とため息をつく。

 札幌延伸後は並行在来線の函館線(函館-小樽、約250キロ)もJR北海道から経営分離されるが、受け皿は決まっていない。


機運どう高める

 山陰新幹線(大阪-下関)と中国横断新幹線(伯備新幹線、岡山-松江)の計画を抱える山陰両県にとっても、並行在来線の扱いは重い課題だ。

 加えて、函館市が推進する広域連携も懸案の一つ。新幹線誘致に向け、隣県の岡山、兵庫の協力は不可欠ながら、沿線人口が少ない上、並行在来線の運営費を負担してまで新幹線を通そうという機運は高まる気配はない。「視察を通して広域連携の必要性を改めて理解したが、課題も多いと実感した」と島根経済同友会島根・鳥取合同委員会の上定昭仁委員長(45)。

 並行在来線の課題解消策と共に、誰もが納得できる開業メリットを示さない限り、新幹線計画は容易に「発車」できそうにない。

2018年11月2日 無断転載禁止