認め合う東洋と西洋

 鳥取県は幕末に西洋式の反射炉を築き、大砲鋳造に成功した数少ない地域の一つ。同県北栄町の由良台場跡が歴史を伝える。かつて町内にあった六尾反射炉では、西洋式の石炭ではなく木炭を燃料に使うなどたたら製鉄の技術も生かし大砲を鋳造。在来文化と組み合わせ外来文化を消化した▼日本人と西洋人には発想の違いがある。江戸時代に欧州の医学書「ターヘル・アナトミア」を翻訳した杉田玄白らによる「解体新書」の図解にも、それは見て取れる。ターヘル・アナトミアは陰影で立体感を表す西洋画の技法で描いてあるのに、解体新書は輪郭線を描く日本画の技法で「翻訳」した▼理解できずにいたドイツの哲学者ハイデッガーの著書「存在と時間」の内容を、たまたま禅の本を見ていて「言いたいことはこれか」と自分なりに解釈した経験もある。禅の精神を西洋風に表すと、こんな難解な言い回しになるのかと感じたものだ▼漫画家・本宮ひろ志さんの作品「夢幻の如(ごと)く」は、本能寺の変を生き延びて世界制覇を大方遂げた主人公の織田信長が東洋と西洋の思想の違いを挙げ、互いに認め合う大切さを説く▼例えを絵画に戻すと、日本の浮世絵がなければ西欧で花開いたアールヌーボーもなかったろう。発想の違う人間がいるからこそ、刺激し合って新たな文化が生まれる。多様な価値観のありがたさ。どこぞの首相や大統領に聞かせたい。(志)

2018年11月9日 無断転載禁止