国会論戦/合意形成へ努力尽くせ

 国会は、2018年度補正予算が成立し、中盤の論戦に入った。7月の通常国会閉幕後に、大島理森衆院議長が行政府と立法府に「深刻な自省と改善」を促す異例の所感を発表してから初めての国会。序盤の与野党攻防の大きな争点になったのは、外国人労働者の受け入れを拡大する入管難民法改正案だ。

 深刻な人手不足に対応するために、認めてこなかった単純労働の分野まで道を開くという、この国の姿に関わる政策転換である。にもかかわらず、ここまでの審議で、政府側は野党の疑問や懸念に十分に答えることができず、法案の不備ばかりが目立ち、むしろ「生煮え感」が強まった。

 対象となる業種や人数も正式に定まっていない。日本語教育の充実や生活支援など、外国人受け入れに不可欠な教育、社会保障、税制といった分野の環境整備の制度設計も後回し。長時間労働や低賃金など人権侵害が指摘される現行の技能実習制度を並立させることに対する納得できる説明もなかった。

 ここに「安倍政治」の体質がにじむ。来年4月スタートという日程ありき、与党の数で外国人労働者に日本へ来てもらう法律を取りあえずつくれば、さまざまな課題は成立後に省令など政府の一存で決めていけばいい、と考えているのだろう。浮かび上がるのは国会軽視である。

 これから改正案の本格審議が始まる。旧民進党系の野党3党派でつくる「外国人の受け入れと多文化共生社会のあり方を考える議員連盟」は、政府案の”対案”をまとめた。外国人労働者の拡大は避けられないと認識している野党議員も少なくない。

 ならば国会で政府案の欠陥や足りないところを徹底的に論議すればいい。期限を切らずに真の「共生社会」を構築していけるよう、政府案の抜本的な見直しを含め合意形成へ努力を尽くす。それが「熟議」と呼ぶ立法府のあるべき姿であり、改正案への対応は試金石となる。

 安倍晋三首相をはじめ政府には野党の意見に耳を傾ける謙虚さと度量、野党側にも具体的な提案力が欠かせない。首相は所信表明演説で「長さゆえの慢心はないか。そうした国民の皆さまの懸念にもしっかり向き合っていく」と約束したのだから、まずそれを行動で示してもらいたい。

 さらに、衆参両院の代表質問、予算委員会審議では、安倍首相や閣僚の誠実とは言い難い答弁も目立った。

 9月下旬の日米首脳会談で交渉入りに合意した「物品貿易協定(TAG)」は「自由貿易協定(FTA)」でないのかと問われ、首相は「FTAに確立した定義はない」と論点をそらした。片山さつき地方創生担当相は、週刊誌が報じた国税庁への口利き疑惑について、提訴したことを理由に、説明から逃げた。

 公文書改ざんなど財務省の不祥事が相次ぎながら留任した麻生太郎財務相は、政治責任をとる覚悟を迫られたが、「後世の歴史家の判断を待つ」と人ごとのようにはぐらかす。初歩的な質問の答弁に窮する閣僚の失態もあった。

 国民の負託に応える立法・行政監視活動を果たすよう求めた議長の所感を真摯(しんし)に受け止め、実践していけるのか。機能不全に陥った国会の復権が試されている。

2018年11月9日 無断転載禁止