石見根付の伝統つくる 清水 巌(江津で制作)

清水巌を顕彰する石碑=江津市江津町
高い技量 海外でも評価

 島根県西部に伝わる工芸品「石(いわ)見(み)根(ね)付(つけ)」。石見根付を生み出し、印(いん)籠(ろう)やたばこ入れなどのひもの先につける小さな留(と)め具(ぐ)だった根付を、高い技(ぎ)能(のう)で芸術(げいじゅつ)品にまで高めたのが清水巌(しみずいわお)(1733~1810年)です。工(こう)房(ぼう)を構(かま)えた江(ごう)津(つ)市では、伝(でん)統(とう)を受け継(つ)ぐ職人(しょくにん)が今も根付を制(せい)作(さく)し、国内外から注目を集めています。

 巌は、現(げん)在(ざい)の松(まつ)江(え)市玉(たま)湯(ゆ)町に生まれました。13歳(さい)の時、雲(うん)南(なん)市掛(かけ)合(や)町にあった寺に入り、僧(そう)侶(りょ)となりました。幼少(ようしょう)期(き)からものづくりが好きで、時間を見つけては木などで彫刻(ちょうこく)品を作っていたといいます。

 作品の出(で)来(き)栄(ば)えに驚(おどろ)いた寺の関係者の勧(すす)めで、江戸に出て数年修行(しゅぎょう)した巌は、鳥取県や京都府、島根県の大(おお)田(だ)市に移(うつ)り住んで腕(うで)を磨(みが)きました。宝(ほう)暦(れき)年間(1751~64年)に江津市の豪商(ごうしょう)、横(よこ)田(た)五(ご)左(ざ)衛(え)門(もん)に招(まね)かれ、市内に工房を構えて熱心に制作に取り組みました。

 日本人が着物を日常(にちじょう)的に着ていた時代、お金を入れる巾着袋(きんちゃくぶくろ)、印章や薬を入れる印籠、たばこ入れなどを帯(おび)から提(さ)げて持ち歩いていました。こうした物が腰(こし)からずり落ちないように、ひもを付けて帯に挟(はさ)んだ留め具が根付です。

 巌は、イノシシやゾウの牙(きば)、黒(こく)檀(たん)、海(うみ)松(まつ)(サンゴの一種)などを素(そ)材(ざい)に、高い技(ぎ)能(のう)でカエルやクモ、ムカデなどの身近な生き物を図(ず)柄(がら)とした写実的な作品を残しました。作品は海外でも高く評価(ひょうか)され、米国人鑑(かん)定(てい)家(か)レイモンド・ブッシェル氏は、著(ちょ)書(しょ)「収集家(しゅうしゅうか)の根付」(1971年発(はっ)刊(かん))の中で、数ページにわたって巌の作品をカラー写真付きで紹介(しょうかい)。オークションでも数百万円から数千万円の高(たか)値(ね)で取引されたことがあります。

 江津市では現在、彫刻家田(た)中(なか)俊(とし)■(目ヘンに希)(き)さん(76)=同市嘉(か)久(く)志(し)町=が伝統を継承(けいしょう)しています。田中さんは「巌の作品には、人(ひと)並(な)み外(はず)れた高い技量がある。石見根付の伝統をつくった偉(い)人(じん)の歴史を後世に受け継いでいきたい」と話しました。同市江津町の市立図書館前には巌の石(せき)碑(ひ)が建立(こんりゅう)され、功(こう)績(せき)を顕彰(けんしょう)しています。

2018年11月21日 無断転載禁止

こども新聞