褒めて食うべし

 戦国武将の伊達政宗は料理好きで自ら台所に立つこともあったらしい。配色に凝った60品ものおせち料理を創作している。とはいえ普段の膳に並ぶ料理は質素で「朝夕の食事うまからずとも褒めて食うべし」と謙虚さも持ち合わせていた▼食品製造にも手を広げ、みそ醸造所を造り生産した。戦場での戦闘能力を左右する兵糧に関心を持ち、夏でも日持ちするように工夫。豊臣秀吉の朝鮮出兵の際にも持ち込まれ、おにぎりに付けて兵士の腹を満たした▼「腹が減っては戦はできぬ」で思い起こすシーンがある。連合赤軍が立てこもり銃撃戦もあった1972年2月のあさま山荘事件。山荘を囲む機動隊が困ったのが食事だ。弁当が凍る氷点下15度のいてつく寒さの中で役立ったのが発売間もないカップ麺。湯気の立つ容器を持つ隊員の姿がテレビに映し出され、商品のヒットに結び付いた▼数年前に、英国の科学アカデミーが食の歴史の過程で重要な発明として、冷蔵庫、殺菌・滅菌、缶詰を上位3項目に挙げた。いずれも食品の保存や貯蔵に貢献してきたもの。このうち缶詰は軍隊の食料として開発された。やはり戦と食品開発の歴史は重なり合う▼缶詰業界では健康志向からサバ缶がブームという。個食の時代にはインスタント食品が重宝されるのだろうが、時には仕事や学業との戦いを忘れて独眼竜よろしく手料理を褒めて食うべしを実践したい。(泰)

2018年12月5日 無断転載禁止