猪か豚か

 正月も三が日を過ぎると普段、食べ慣れたラーメンやカレーライス、カツ丼などが恋しくなる。豚肉が入った料理が多い。手頃な値段で満足感が味わえる庶民食だからだろう▼今年は十二支で言えば亥(い)年。豚のルーツ、猪(いのしし)の年になる。一方、中国や台湾などでは「猪」の字は豚を指し、「豚年」になるという。野生の猪を家畜化した歴史や食文化の違いがあるようだ。「うかんむり」の下に豚を意味する「豕(いのこ)」を書く漢字の「家」も、豚と一つ屋根の下に暮らしたからだとの説もある▼そう言えば、台湾の故宮博物院の名品の一つは豚の角煮と色つやがそっくりの「肉形石(にくがたいし)」。遺体の手に握らせた「玉豚(ぎょくとん)」と呼ばれる瑪瑙(めのう)製の副葬品もあった。子どもをたくさん産む豚は繁栄や金運の象徴とされ、死後も生活に困らないようにとの思いが込められたとか▼ただ国が違えば、「豚に真珠」や「豚もおだてりゃ木に登る」と言われ、肉の評価に比べると、豚そのもののイメージは「西遊記」の「猪八戒(ちょはっかい)」のようにいまひとつ。日本でも、おとぎ話の「三匹の子豚」や宮崎駿監督のアニメ映画「紅の豚」が親しまれるくらいだ▼ぼたん鍋、猪鍋(ししなべ)で知られる猪も「猪突猛進」と例えられ、今では農作物を荒らす有害獣。酒やそばをいただく「猪口(ちょこ)」は当て字で、猪や豚とは関係ないらしい-などと新年早々、知ったかぶりをすると「遼東(りょうとう)の豕」と笑われる。(己)

2019年1月5日 無断転載禁止