レッツ連歌<2019年新春特集>(下房桃菴)・1月10日付

(挿絵・麦倉うさぎ)
 あけましておめでとうございます。

 レッツ連歌も四半世紀を終えて、26年目に入りました。私も、あと数日で75歳。これまでの人生の3分の1をレッツ選者として過ごさせていただいたことになります。

 これを機に今年からは、第4週は要木木純さんに、第5週のスペシャルは黒田光さんに、それぞれご担当いただくことになりました。選者が変われば、また新しい句風も育っていくことと思います。ことに初めての女性選者には、大いに期待しております。

 5月には、レッツ連載600回の節目も迎えます。そのときには大祝賀会をと、いつもお世話願っている植田延裕さんが、いまから張り切っておられます。

 そのころまでには、単行本『レッツ!連歌』の第5集を刊行できればと、私も準備に余念がありません。

 みなさん、このコーナーをこれまで以上に守(も)り立てていただいて、この1年をレッツ飛躍の年にしてください。

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 動画も添付して初メール

新雪にシュプールで書くおめでとう  (松江)岩田 正之

孫たちは笑い取ろうと競い合い  (隠岐の島)大田 有子

目標の五キロ減量達成し       (松江)花井 寛子

日中の架け橋となれトキの雛(ひな) (松江)森  笑子

あなたへのアイラブユーを歌に込め  (益田)黒田ひかり

終活の友を尻目に挑戦し       (益田)竹内 良子

闇の中光る眼だけが動いてる     (美郷)源  瞳子

カタカナ語なんど聞いても身につかず (雲南)渡部 静子

目標を平成最後に達成し       (松江)森廣 典子

自慢げにハワイの海で波に乗り    (飯南)塩田美代子

四苦八苦して指がつる大みそか    (江津)岡本美津子

スタンプを押していいねと素っけなく(奥出雲)大塚  隆

十億の束を炬燵(こたつ)に積み上げて(出雲)遠藤  伸

ガラケーをバカにしくさるドラ娘   (江津)星野 礼佑

アリバイを作るつもりの不自然さ(沖縄・石垣)多胡 克己

その日から見合い相手と糸が切れ   (美郷)芦矢 修司

正月の郵便ポスト寂しげに      (江津)井原 芳政

お年玉はずんで孫に教え乞い     (浜田)山崎 重子

富士山を軽飛行機で一回り      (美郷)吉田 重美

生の声聞きたい孫に電話する  (兵庫・明石)折田 小枝

豪雪でバスも電車も運休し      (松江)植田 延裕

リスナーにスッピンの顔公開し    (松江)相見 哲雄

無駄話できなくなって物足らず    (出雲)石飛 富夫

着いたかと固定電話が念を押し    (松江)三島 啓克

イノシシの家族が増えた里の春    (出雲)飯塚猫の子

突然ですがお見知りおきを願います  (出雲)平井 悦子

八歳になった我が家のウサギくん   (浜田)松井 鏡子

パパ撮影演出はママぼく主演     (松江)川津  蛙

イノシシが畑のワナにひっかかり   (川本)大畑喜美子

爺婆(じじばば)は孫のしぐさに大笑い(松江)庄司  豊

足ばかり写ってますヨおじいちゃん  (安来)原田久美子

年賀状だけの付き合いやめようか   (出雲)吾郷 寿海

手に取ってみたがやっぱり孫を呼び  (出雲)三島リチエ

ばあさんや孫だ孫だよ腹を見ろ  (隠岐の島)浅垣 多世

親よりも孫を写せと即返信      (益田)可部 章二

妖怪が境港に集い来て        (米子)板垣スエ子

文明の進歩どこまで行くのやら    (松江)加茂 京子

まいったかお前の不倫相手だぞ    (松江)本田  章

お年玉もらった人は手を挙げて    (出雲)川上 梨花

イノシシの畑荒らしも大目に見    (江津)佐野千寿子

お返しはドローンで送るお年玉    (浜田)勇 之 祐

鈍行で日本列島巡る旅        (出雲)岩本ひろこ

ドカ雪に押し込められた親子連れ   (松江)須山 吉雄

どげだらかこげな格好でいいだらか  (松江)石塚 修三

手作りのお節料理は出雲風   (埼玉・所沢)栗田  枝

ジイちゃんもユーチューバーに名を連ね(松江)小谷由紀子

わが家にも笑いの神がやってきて   (浜田)滝本 洋子

日に映える富士を眼下に一番機    (松江)野津 重夫

墨付けに駐在さんも逃げ回り     (江津)花田 美昭

孫連れて正月ぐらい帰って来い    (江津)江藤  清

凧(たこ)上げて独楽(こま)を回して羽根ついて

                  (出雲)行長 好友

フキノトウもう顔出した温暖化    (美郷)源  連城

飛ぶドローン横目で睨(にら)む奴凧 (益田)石川アキオ

早速に親戚中に電話して       (松江)持田 高行

逆立ちを華麗に決める七十五     (美郷)福田美智江

ちょっとだけ自慢がしたいフルムーン (雲南)錦織 博子

帰らない嫁と待たない姑と      (益田)石田 三章

四十の息子から来るペアルック    (美郷)芦矢 敦子

石見神楽ボク覚えたよおじいちゃん  (益田)吉川 洋子

袂から着信音が二度三度       (浜田)勝田  艶

私たち再婚しましたこの齢(とし)で (雲南)妹尾 福子

覚えないオレオレ詐欺にゃ騙(だま)されず

                  (川本)高砂瀬喜美

ジジババがちらつかせてるお年玉   (出雲)放ヒサユキ

元カノのイヤミを込めたおめでとう  (安来)根来 正幸

ウリ坊の着ぐるみママの自信作    (出雲)野村たまえ

恥ずかしいけれど私のセミヌード   (松江)安東 和実

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 ソ連時代の映画監督クレショフが、おもしろい実験をしております。

 被験者を三つのグループに分け、第1のグループには、スープの入った皿を映したカットに続けて、名優モジューヒンの顔のクローズアップを見せます。第2のグループには、棺(ひつぎ)に納められた遺体のカットに続けて同じ俳優の顔を、第3のグループには、ソファに横たわる女性の姿に続けて俳優の顔を見せます。その結果、第1グループの被験者は、モジューヒンの表情に飢えを、第2グループは悲しみを、第3グループは欲望を、それぞれ読み取った、というのです。ところが実は、俳優のカットはどれもまったく同じ、「無表情」なものだったのです。

 もともと関係のない二つの映像であっても、それらを前後に並べることによって、人間の脳は、意味を読み取ってしまいます。おもしろいものですね。

 このような現象を、実験者の名を取って「クレショフ効果」と呼びます。クレショフ効果は、映画のモンタージュに応用されます。

 モンタージュといえば、やはりソ連時代の映画「戦艦ポチョムキン」(エイゼンシュテイン監督)が有名で、中でも、「オデッサの階段」と呼ばれる場面が、よく引き合いに出されます。ユーチューブでご覧になってください。

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 私も試みに、シナリオ(みたいなもの)を二つ、作ってみました。

 シナリオ(1)

  カットA 神社の社務所。賽銭(さいせん)箱が返され、賽銭勘定が始まる。

  カットB 中に交ざっているドルやユーロの紙幣。

  カットC 神様たちが地球儀を回しながら、なにごとか相談をしている。

 シナリオ(2)

  カットA 参拝客でごった返す神社の境内。

  カットB テレビカメラと、突きつけられるマイク。

  カットC あわてて左右に分かれる男女。

 シナリオ(1)からは、神様たちが国際結婚の縁結びをしているのだ、という意味が読み取れそうです。(2)からは、不倫かなにか、人に知られては困るような男女関係が見えてきます。…ズブの素人にしてはよくできているでしょう。

 いやいや、そうではない。白状しましょう。

 実は、シナリオ(1)は、去年の新春特集(第568回)の入選句、

  ドルやユーロも交じる賽銭

  地球儀をクルクル回す神議り

を、そのまま借りてきたにすぎません。(2)も、2月(第571回)の入選句、

  出口で突然マイク向けられ

  二人連れパッと離れて知らん顔

のパクリ。

 そうなんです。句を付けるということは、映画の編集作業にとてもよく似ているのです。早い話が、前句とあまり関係のない句であっても、多くの場合、読者の脳は、ちゃんと意味を読み取ってくれます。「付句」だからといって、付けよう付けようとしないで、逆に、前句から離れよう離れようと心がけてみてください。そのほうがおもしろい句ができるものです。

 この「離れる」ということを、別のことばで「飛ぶ」とも申します。

 …ちょっと堅い話になりましたか。

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 次は、

  なぜ教えたと逆ギレをする

に、長句(五七五)を付けてください。

 「教えた」といっても、人に知られたくないことを人に教えた、という場合と、自分が知りたくないことを教えられた、という場合と、少なくとも2通りが考えられます。2通りの句を作っていただくといいですね。

(島根大名誉教授)

2019年1月10日 無断転載禁止

こども新聞