五輪招致捜査/疑惑の深刻さに向き合え

 1年半後に開催が迫る中、東京五輪の招致活動で重大な不正があったのではないかと、世界から疑惑の目が向けられることになった。

 フランス捜査当局が招致委員会の理事長だった竹田恒和日本オリンピック委員会(JOC)会長に対し、贈賄容疑で捜査を開始したことが明らかになった。

 招致委がシンガポールの会社と多額のコンサルタント契約を結び、その大部分がセネガル出身の国際陸連会長(当時)の息子を経由して、五輪開催都市を選定する国際オリンピック委員会(IOC)委員の何人かに渡ったのではないかとの疑惑が浮上したのは2016年のことだった。

 JOCは弁護士と公認会計士による外部の調査チームを設けて調べた。結果は、契約したコンサルタント会社は貴重な情報を入手できる環境にあり、詳細な活動報告が提出されたことからみて相応のロビー活動が行われていたと考えられるというものだった。

 招致委はコンサルタント会社と元国際陸連会長の息子との密接な関係を認識しておらず、コンサルタント料がどのように使われたのかは知る由もなかったと、調査チームは指摘した。

 しかし、フランス捜査当局が突き止めようとしているのは、まさにこの部分だ。日本では「契約に違法性はなく、IOCの倫理規定違反にも当たらない」と結論づけられたが、フランス当局はそうは思っていない。国際陸連が本部を置くのはモナコだ。フランスの司法権はモナコに及んでいる。

 この元国際陸連会長の息子、パパマッサタ・ディアク氏による不正が次々と明らかになり、セネガル政府が国際刑事警察機構(ICPO)の引き渡し要求を拒否している以上、フランス当局にとって捜査対象を外部に求めることは不可欠なのかもしれない。

 P・ディアク氏はリオデジャネイロ五輪招致の買収工作にも絡んだ疑惑が持たれている。フランス当局の協力要請を受けたブラジル当局はリオの招致活動で中心的役割を担ったブラジル・オリンピック委員会会長(当時)を17年に逮捕した。

 国際陸連コンサルタントでもあったP・ディアク氏はそればかりか、シカゴ・マラソン3連覇のロシアの女子選手にドーピングの事実の隠蔽(いんぺい)を持ちかけ、日本円換算で数千万円の賄賂を受け取ったとして、国際陸連から永久追放処分を受けた人物でもある。

 フランス当局の捜査が進めば、過去に例を見ない五輪と国際スポーツ界に対する大きな脅威の実態が浮かび上がるのではないか。

 IOCがフランス当局と連動するように、IOC委員でもある竹田氏に対する調査を倫理委員会で始めたのは当然だ。竹田氏は既にフランス当局の聞き取りに対して、賄賂に当たるような不正は何も行っていないと説明したことを明らかにし、疑惑を拭い去るために今後とも調査に協力すると明言している。

 フランス当局の聞き取りが、もしも竹田氏以外の招致関係者に広がるならば、全ての関係者は知る限りのことを包み隠さず話さなければならない。疑惑の霧に包まれたまま五輪を開催することはできない。疑惑は深刻だ。関係者はこの深刻さに誠実に向き合わなければならない。

2019年1月13日 無断転載禁止