島根県19年度予算/堅実路線の先を示せ

 島根県の2019年度当初予算案が公表された。一般会計総額は前年度当初比3.7%増の4687億円。2年連続して増え、リーマン・ショック対策を盛り込んだ09年度以来の伸び率となった。

 近年多発する自然災害に備えた国の国土強靱(きょうじん)化緊急対策に伴い、防災関連を中心に公共事業を大幅に増やしたためで、国の施策に合わせて積極型の予算を組んだ。

 19年度予算は今期限りで引退する溝口善兵衛知事の3期12年を締めくくる集大成的な意味を持つが、最後まで溝口県政カラーがよく分からなかったという県民も多いのではないか。

 それは予算編成にも反映された。知事就任以来、危機的状況に陥っていた県財政の立て直しに追われ、県民に印象付けるような目玉施策を打てる余裕がなかったとみることもできる。

 派手なパフォーマンス先行型よりまず足元を固めようとする溝口知事の堅実路線の成果は否定しないが、県の主体性が見えにくい「国策相乗り型」に物足りなさを感じることも指摘しておきたい。

 19年度予算案は、地方創生・人口減少対策をまとめた「県版総合戦略」の推進と道路、河川改修など災害対策を強化する安全な県土づくり、外国人住民の受け入れ環境などを整備する共生型公共サービスの充実などを柱とする。

 このうち5カ年計画で進め19年度に最終年度を迎える県版総合戦略には、前年度比4億円増の686億円を充てる。市町村が行う結婚支援事業に新たに交付金を設ける以外はほぼ継続事業で、新たな切り口に乏しい。

 県人口減少の要因は、県外への流出人口が流入人口を上回る社会減中心から高齢化の影響を受けた自然減型に移行しており、出産、子育てを支援する施策にはさらなる工夫が求められる。

 積極型予算をけん引する公共事業は前年度比18.9%増の1003億円で当初ベースで12年ぶりに1千億円を超えた。しかしこの間、県内の建設業者は減少し、技術者を中心に人手不足に見舞われている。

 国の緊急対策によって県の実質負担が少なくても事業を増やせるようになったが、人手不足の中で事業を計画通り実施できるか見通せない。溝口知事は多少遅れても事業執行の努力を強調しているが、発注時期を平準化するなど業者への配慮も求めたい。

 県内の建設業者が減ったのは、公共事業が削減されてきた影響もあり、災害に強い県土づくりに向けて建設業界の人材確保の重要性は増す。

 地方交付税によって県の負担がなくなる臨時財政対策債を除き、県の借金の累計である県債残高は19年度末で5766億円。溝口知事が就任した07年度当時に比べて2800億円以上減っているが、依然として一般会計予算を上回る。

 県税収入など自主財源に乏しく地方交付税や国の補助金などに依存する県財政の姿は変わらない。しかし県債残高を減らしたことで知事就任以降借金返済に充てる公債費は減っている。

 借金の返済負担に押しつぶされそうだった時期に比べると改善された。その改善を県民生活に実感できるようにしていかなければならない。

2019年2月12日 無断転載禁止