「恵みの雨」の記憶

 雨脚が強まる中、甲子園のベンチに引き揚げる米子東ナインの姿をカメラ越しに追いながら「これは恵みの雨になるかもしれない」と頭をよぎった。1996年の選抜高校野球1回戦。硬さが見える米子東は初回、釜石南(岩手)に先制点を許した。二回も先頭打者に四球を与えたところで中断。結局、降雨ノーゲームになった▼予感は当たった。翌日の再試合。緊張感が解けた米子東は初回、相手投手の乱調を突いて4四球を選ぶと、大田優投手の満塁本塁打が飛び出し、いきなり5点を先制。終盤に逆転されたものの、九回に連打で3点を奪い、9-7で競り勝った。集中力が際立つチームだった▼甲子園での取材歴は10試合を超えるが、降雨ノーゲームはもちろん、満塁本塁打を見たのも初めて。糸を引くように右翼席へ飛び込んだライナーの軌道は、今も目に焼き付いている▼あれから23年。若草色の「YONAGO」の文字が映えるユニホームが甲子園に戻ってくる。エースが左腕で、秋季中国大会準優勝という戦績は前回出場時と同じだ。選手16人の小所帯にも「少ないからこそ、短時間でたくさん練習できる」と紙本庸由監督。集中力は前回に劣らない▼プロ野球選手の予備軍のような私立校がある中、公立の進学校の活躍は全国の球児に勇気を与える。組み合わせ抽選はきょう。どんな強豪と当たっても臆せず「米東旋風」を見せてほしい。(健)

2019年3月15日 無断転載禁止