宍道高校 地域とのつながり求めて

宍道高校校舎全景(航空写真)
 島根県立宍道高等学校(秋月弘司校長)は、松江市宍道町にある、定時制(約220人)と通信制(約1200人)からなる学校だ。単位制なので好きな科目を選択することができるうえに、制服なし、仕事やアルバイトをしながらでも通うことができるという、とても自由な体制が生徒に人気だ。

 先日、第10回の入学式で定時制73人、通信制126人の新入生を迎え、新年度がスタートした。創立10周年に向けて、もっと宍道町と宍道高生について知ってほしいと思った私たち「地域系活動同好会」は、最近の宍道高生の活躍や地域とのつながりについて調べ、今年2月にあった「高等学校問題解決型学習成果発表会」で発信した。

 宍道町や宍道高校のさらなる認知度アップを目的に、昨年度の「地域系活動同好会」の活動の振り返りも兼ねて、その発表会の様子や発表内容を中心に、他の秀でた活動やユニークな取り組みをまとめてみた。拙い文で読みづらいかもしれないが、「宍道町と宍道高校の生徒の可能性」を感じ取ってほしい。(地域系活動同好会 遠藤壮介)


「全国和菓子甲子園」で作品作りに挑戦する宍道高校の生徒たち
高校問題解決型学習成果発表会
 高い評価と好印象

 今年2月に島根県立産業交流会館(くにびきメッセ)で開催された「高等学校問題解決型学習成果発表会」に、私たち「地域系活動同好会」が参加した。この発表会には県内から九つの高校が参加した。

 3カ所のブースに1校ずつ入り、同時に発表。聴く人たちは3校のうち好きな高校を選んで聴きに行くという発表形式で、学校や地域などが直面する問題に、どのような活動をしてどのような結果を得たのかを、ファシリテーター(良い会議へと導く進行役)も交えて発表し合った。

 私たちは「つながりから見えてきたこと」をテーマに、宍道のマイナーなイメージに対し、宍道町とつながった宍道高生の活躍やつながりの持つ力について、「和菓子甲子園」に出場した2人へのインタビューや映像、熱いエンディングまでを交えて発表した。

 「宍道高校は6人それぞれが自分のできることや長所を生かせていて、とてもいいチームだという印象を持った」「自分たちの高校とは全く違う発表形式で驚かされた。発表というより演劇みたいで、楽しく見ることができた」など、温かい感想や評価をたくさんいただいた。

 閉会式では、宍道高校の3人がそれぞれの思いを発表し、他校生や大人とともに深く学んだ一日を振り返った。

 発表会の後、実際に発表したメンバーは「初めに席替えがあって驚いた。焦った」「隣の席の子と初対面だったけど、友達になれてうれしかった。その子と鼓舞し合うことで、より楽しく発表することができた」「前日はなかなか眠ることができないくらい緊張していたが、本番は楽しく発表できた。本当によかった」と振り返り、今後の活躍に向け士気を高め合った。

 さらに、終業式前日には全校生徒に今年1年の地域活動についてのまとめとして、自作のドキュメンタリー映像を披露した。多くの生徒が参加したボランティア活動なども紹介され、地域での学びが私たちの成長の糧になっていることを共有できたと思う。

 今回の発表会は一つの通過点にすぎない。私たちは発表会によってできた「つながり」の力を糧にして、また新たな「つながり」をつくり、地域をフィールドに学び続けていく。


「つながり」をテーマに、ソバの実や出西ショウガが練り込まれたわらび餅(左)と雪餅(右)
和菓子甲子園で見事準優勝
 経験ゼロの男子2人快挙

 昨年8月に大阪市の辻製菓専門学校で行われた「第9回全国和菓子甲子園」決勝大会に宍道高生2人が出場し、見事に準優勝した。大会のテーマ「わが町自慢の創作和菓子」に即して応募されたのは318作品、決勝に残ったのは18作品で、その中での準優勝というすごい成績だ。

 そんな快挙を成し遂げた2人は「宍道高校のことをもっといろいろな人に知ってほしい」と思った先生から声を掛けられ、快く応じてくれた好青年たちだ。和菓子の知識ゼロの彼らは、出雲市斐川町にある和菓子屋「福泉堂」のご協力をいただき和菓子作りに挑戦。夏休み返上で練習を重ね、その努力とセンスでこの好成績を収めた。

 彼らは「つながり」を作品のテーマにし、大名茶人である松平不(ふ)昧(まい)公のわびのイメージと、授業で作った苔(こけ)玉の趣ある雰囲気と宍道町をつなげて、宍道産のソバの実と出西ショウガを練りこんだ、苔玉のようなわらび餅と雪餅を製作した。

 「地域の食材を使って和菓子を作ることで、宍道町の方々とつながることができ、そのつながりによっていろいろな支援をいただいたことが、この結果につながったと思う」と彼らは語った。この言葉に「つながりの力」の大切さを感じた。


NIE
 進路学習や授業で活用

 宍道高校では司書教諭が中心になって、多目的ホールや昇降口に新聞コーナーを設置し、その日の新聞はもちろん、テーマに合わせて記事をまとめたものを掲示している。廊下にもピックアップコーナーがあり、1カ月に2回程度更新されている。図書館では新聞本紙も自由に閲覧でき、テーマ別のスクラップなども進路学習や授業で利用できるようになっている。

 ほかにも、各教科の先生によって授業に関する記事が特別教室や廊下に貼られている。実際に授業で新聞を利用しながら学ぶこともある。

 宍道高校では校内至る所に新聞があるが、それらを自主的に利用する生徒はまだまだ少ない。「宍道高校では新聞を活用して特徴ある学びを推進している」と言えるようになるためには、学校や生徒一人一人が新聞に対する意識を高めていく必要があるかもしれない。


たたら製鉄操業実験で取り出したけら
たたら製鉄操業実験
 失われた魅力取り戻す

  学会で研究成果を発表
 古代から日本に伝わる「たたら製鉄」は、宍道町でもかつては盛んだったとされている。その失われた魅力を取り戻すため、たたら製鉄の操業実験が昨年8月と11月に宍道高校で行われ、興味のある生徒たちが参加した。

 築炉から製鉄まで全て生徒たちの手で行い、宍道の土からでも鉄らしきものを作ることができるのか調べた。ほんの少ししか製鉄できなかったが、「たたら製鉄」のすごさを知った。

築炉から製鉄まで全て生徒の手で行った、たたら製鉄操業実験
 その時の実験結果を基に、築炉を工夫して11月に2回目の実験が行われた。予想通り、前より多く製鉄できた。「地域によって土の成分が違うので、製鉄のいろいろなところにその地域の味が出る。そこがたたらの面白いところだ」「作ったものは純粋な鉄じゃないと思う。まずは作った鉄の純度を調べたい。純粋な鉄を生産できるよう、さらに研究を続けたい」と、実験に参加した生徒たちは話した。彼らの熱意に期待と感動を覚えた。

 今年の3月、京都大学で開かれた化学工学会で、この実験と研究成果について発信した。研究はまだまだ続く予定だ。


「食の縁結び甲子園」で製作した「瑞風プレート」(左)。右は具材をゼラチンで中央に固めたスープ。宍道湖に浮かぶ嫁ケ島を表現した
食の縁結び甲子園
 「瑞風」テーマに宍道の魅力発信

 昨年11月に松江市のくにびきメッセ(島根県立産業交流会館)で開催された「第3回食の縁結び甲子園」県予選にも、宍道高校から3人の生徒が出場し、LPガス会長賞を受賞した。惜しくも県代表は逃したものの、宍道高校の最寄りの駅、JR宍道駅に停車する豪華寝台列車「瑞風(みずかぜ)」に対するおもてなしをテーマに、ワンプレートの料理を制作することで宍道の魅力を県内に発信した。

 スープの具材をゼラチンで中央に固め、宍道湖に浮かぶ嫁ケ島を表現するなど、優れたアイデアが際立つ料理になった。前日には地域の方を招き、試食会を開催した。

 出場した生徒は「料理でおもてなしを表現するのに苦労した。料理に関する学校に進学するので、この経験を生かしたい」と語った。


 ■全国大会で優勝者も
 陸上部には「第53回全国高等学校定時制通信制陸上競技大会」の1500メートル、3000メートル障害で優勝した選手もいる。チームみんなで励まし合って練習に励んでいる。



編集後記
 地元住民との絆実感

 本年度からNIEの実践指定校として、この青春はつらつ新聞を皮切りにユニークな活動を展開していく予定である。

 新聞には書ききれなかったが、JR宍道駅に停車する豪華寝台列車「瑞風」と瑞風バスとの記念写真撮影のボランティアや、瑞風のクルーの皆さま方との交流会、宍道高校の近所にある宍道幼保園での保育士体験、宍道高校の学園祭からいつもの登下校時に至るまで、数えきれないほどに宍道高校は宍道町の人とつながっている。

 今回の新聞制作中に、そのたくさんのつながりの力の中に、宍道町と宍道高校とが共に活性化できる可能性をみた。その実現に向けての小さな力になっていきたい。

2019年5月2日 無断転載禁止

こども新聞