病魔が憎い

 電話にはタイミングというものがある。相手は向こうで何をしているか分からない。電話取材の際、時間帯によってはひんしゅくを買ったり、すんなり話が通らなくなったりしたことが何度もある▼約20年前の話。おととい62歳で急逝した島田三郎参院議員=島根選挙区、1期=が若手県議だった頃、鬼門は夕刻だった。幼いわが子を風呂に入れるのは島田氏の担当。その幸せな時間が大切だったのだろう。運悪く入浴中に電話すると、聞いたこともないつっけんどんな答えが返ってきた▼子育ての実体験から、当時の選挙では教育や保育に力を込めた。今では誰もが口にするが、子育て支援を真剣に訴える男性政治家は珍しかった▼ユーモアがあり、皮肉も絶妙。竹下登元首相の秘書だった頃、青木幹雄元参院議員から秘書一同が大目玉を食らった。青木氏は有能な昔の秘書2人の名を挙げ「三、四がなくて五に誰もおらんわ。2人を見習え」。島田氏は平身低頭しつつ思った。自らも秘書だった青木氏は「自分を何番目と思っているんだろう」。この話はシビアな県議選の取材中に聞かされた。こんな話術に乗せられ、肝心な話をそらされたのはこの時だけではなかった▼永田町には議員バッジを着けて復帰。もっと活躍するはずだった。都会しか知らない人たちを田舎のペースに巻き込み、中央偏重の流れを少しでも変えるはずだった。病魔が憎い。(示)

2019年5月10日 無断転載禁止