1~3月期GDP/警戒レベルが上がった

 2019年1~3月期国内総生産(GDP)はプラス成長だったものの輸出、個人消費、設備投資が落ち込み、「悪化」となった3月の景気動向指数に続き、日本経済が変調を来している可能性を示した。

 警戒レベルが一段上がったと言わざるを得ない。政府は景気の現状、先行きを丹念に検証しなければならない。日銀も金融政策運営に万全を期すことが求められる。

 中国経済の減速の影響が向かい風になっているのは間違いない。成長の鈍化と同時進行で米中貿易摩擦が激化し、需要が減退。中国向けの半導体製造装置や電子部品の輸出が落ち込んだ。こうした中、事業環境の先行きにさらに不透明感が広がり、企業は設備投資に及び腰になっていると考えられる。

 企業収益は依然、高水準を維持しているが19年3月期は減益となった企業も目立った。20年3月期見通しも芳しくはない。最高益を更新するなど好調を保ってきたここ数年とは、明らかに風景が異なってきた。米中摩擦に伴ってサプライチェーン(部品の調達・供給網)の再構築を強いられれば、その分のコスト増も業績を圧迫する。

 家計は、所得の伸びがさえない中で、年金や介護などの社会保障保険料の負担が重くのしかかっている状態が続いてきた。これに景気の先行き不透明感が加わり、個人消費は下押し圧力を受けたとみられる。さまざまな商品やサービスの登場でにぎわった改元の効果で4~6月期は多少、回復が見られるかもしれないが、一時的な現象にとどまろう。

 担当の茂木敏充経済再生担当相は内需の増加傾向は崩れていないと強調した。だが、流れとしてはネガティブな方向に転換し始めた可能性は排除できないのではないか。

 全体としてプラス成長を維持したことに多くを頼むのは危うい。今回は内需主導で力強く成長したわけではない。内需不振で輸入が減ったため、輸出入の差に当たる外需が計算上GDPを押し上げたにすぎない。内容を吟味すれば、プラス成長を額面通りに受け取るべきではない。

 当面、焦点になるのは中国経済の推移だ。減速傾向を受け、中国政府は対策を講じている。この効果がいつごろ、どの程度、顕在化し需要が戻ってくるのか。これによって中国を製造拠点とする、あるいは中国市場に進出している企業の対応は違ってこよう。

 さらに留意しなければならないのは、米中貿易摩擦の行方だ。いつごろどのような形で一定の決着をみるのか。両国による報復関税は実際にはどの程度発動されるのか。日本経済への影響、対応策の検討を官民ともに急ぎたい。

 「悪化」となった3月の景気動向指数、今回のGDPなどを踏まえ、政府は月内に「緩やかに回復してきた」とする政府の景気認識の妥当性を精査する。

 夏の参院選が間近に迫る中で、10月に予定される消費税増税に関心が集まる政治的に敏感な時期に、政府として各種の経済指標を踏まえた総合的な判断を示すことになる。日本経済にとって極めて重要な節目になる。診断が正しくなければ、適切な治療が行えないのは経済政策も医療と同じだ。あらためて指摘しておきたい。

2019年5月21日 無断転載禁止