児童殺傷事件/安全の死角なくせるか

 川崎市多摩区で私立小学校のスクールバスを待つ児童らが両手に包丁を持った男に襲われた。児童17人と大人2人が刺され、小6女児と、けがのなかった児童を見送りに来ていた父親が亡くなった。男は自らの首付近を刺した後に身柄を確保されたが、死亡した。隣の麻生区に住む51歳。現場のリュックサックから包丁2本が見つかった。

 いつものように登校していた子どもらが突然、凶行にさらされた。関係閣僚会議で安倍晋三首相は登下校時の安全確保と事件の迅速な全容解明を指示した。動機などは捜査に待つほかないが、このような事件を二度と起こさないために何ができるか、社会を挙げて考える必要がある。

 男はバスを待つ児童らの列に後ろから無言で近づき、いきなり切りつけた。登校というありふれた日常風景の中で、こんな状況は想定しようもない。防ぎようはなかっただろう。バス通学であれば犯罪や交通事故に巻き込まれる可能性は低いから安全-という常識も大きく揺らぎ、保護者や学校関係者らの間には不安が広がりつつある。

 文部科学省はボランティアの見守り活動や防犯カメラ設置などで学校や通学路の安全確保に力を入れてきた。しかし事件事故は後を絶たない。どうすれば、学校や家庭の目が届かない安全の「死角」をなくせるか。不断の検討が欠かせまい。

 現場となったバス停では児童数十人が列を作っており、そこへ男が現れて襲った。スクールバスの運転手に怒鳴られ、男はバスの後方で自ら首を刺した。この間、十数秒。近所の人によると、服が血に染まったり、ぼうぜんと座り込んだりしている子もいたという。惨劇で深く傷ついた心のケアに万全を期してほしい。

 警察庁は「人が自由に出入りできる場所で、確たる動機がなく、不特定の人に殺傷などの危害を加える事件」を、未遂も含めて「通り魔殺人」と定義しており、2008年から昨年までに76件が発生。死者は26人、負傷者は134人に上る。

 08年6月、東京・秋葉原の歩行者天国に元派遣社員の男がトラックで突っ込んで通行人をはねた上、ナイフで襲った。7人が死亡した。「誰でもよかった」と供述。最高裁で、職を転々とする中で社会に不満を持ち、インターネットの掲示板で嫌がらせを受けたことなどで怒りを募らせ犯行に及んだと認定された。

 事件を受けてダガーナイフなど両刃の刃物の所持が禁止され、警察は繁華街など人通りの多い場所に制服警官の配置を徹底するなど対策を進めたが、その後も通り魔事件は相次ぐ。動機は、自殺しきれず、死刑になりたかったといった身勝手なものばかりだ。

 学校を狙ったのが、01年に8人が殺害された大阪教育大付属池田小の児童殺傷事件。これ以降、学校の安全対策は強化されたが、05年に栃木県で小1女児が行方不明になり殺害された。昨年5月には新潟市で下校中の小2女児が犠牲になり、文科省は学校や地域、警察が連携し、犯罪が起きやすそうな場所を確認して警戒するよう求めている。

 多くの対策が取られてきたが、惨劇は現に起きた。なお対策の余地はないか。無防備な子どもを守るため日々問い続けていくしかないだろう。

2019年5月30日 無断転載禁止