天安門事件30年/中国は民主化に着手を

 1989年6月4日、中国の首都北京で、民主化を要求する学生や市民の運動を軍が武力で弾圧した天安門事件から30年。中国は事件後、民主化を凍結したまま、経済成長を追求し、米国に次ぐ世界第2の経済大国となった。

 7年前、最高指導者の地位に就いた習近平共産党総書記(国家主席)は政治的引き締めと自らへの個人崇拝を強め、監視カメラや顔認証などで民主化、少数民族運動を取り締まるデジタル独裁体制を敷く。

 だが、経済的に豊かになれば民主化へ向かうのが自然な流れだ。国内の長期的な安定維持にも国民の多様な意見をくみあげる政治システムが不可欠だろう。中国は民主化に向けた政治体制改革に着手すべきだ。

 30年前、多数の学生たちが北京中心部の天安門広場に座り込み、民主化を求めたが、軍は広場に突入して学生らを排除した。当局側は死者数を319人と発表。民主化運動を「反革命暴乱」と位置付け、弾圧を正当化してきた。

 今、広場周辺には対テロ警備を担う特殊警察部隊や警察犬などを配備し、市民を威嚇する異様な状態だ。天安門事件30年に加え、7月のウイグル暴動10年、10月の建国70周年を控え、治安維持に力を入れるが、当局側の自信のなさがあらわだ。

 習氏は汚職官僚を厳しく摘発する反腐敗闘争で国民の支持を得たものの、昨年3月の憲法改正で国家主席の3選禁止規定を廃止して自らの長期支配に道を開き、一部の国民から「時代に逆行する」と非難された。

 昨年来の米中貿易摩擦も、対外強硬路線が米国の反発を呼んだとして習氏の失策と批判も上がる。党・政府の宣伝機関である中国メディアがこうした本音を伝えることはないが、北京で街の声を聞けば出てくる。当局側が直ちに削除するが、インターネット上も体制批判は少なくない。

 貧富の格差や環境汚染などへの国民の不満も根強い。体制批判を強権で無理やり封じ込めても、いずれは噴出して国内の不安定化を招くのではないか。習政権は早急に軌道修正を考えるべきだ。

 2年前に海南省で温泉開発の地質調査中に拘束された日本人男性に対し5月、懲役15年の実刑判決が言い渡された。中国では2015年以降、スパイ行為で日本人9人が起訴され、うち7人に実刑判決が出された。

 非民主的な制度の中で被告の人権は尊重されているか、冤罪(えんざい)の懸念も払拭(ふっしょく)できない。6月には習氏来日も予定され、7年前の尖閣諸島国有化で悪化した日中関係は改善の流れに乗るが、日本人訴追問題が影を落とす。日本は尖閣国有化後に中国が凍結した人権対話を再開させ、中国に善処を求めなければならない。

 米国のペンス副大統領は昨年10月の演説で、米中貿易摩擦、中国の強引な海洋進出や軍備増強に加え、非民主的な政治制度について激しく批判した。今年4月の先進7カ国(G7)外相会合の共同声明は、中国の人権活動家やウイグル族、チベット族への弾圧について懸念を明記した。

 国際社会には、非民主的で強国路線を行く中国が米国をしのぐ新興大国になることへの警戒が渦巻く。日米欧は結束して中国の民主化を促していきたい。

2019年6月4日 無断転載禁止