年金不信

 長生きしたけりゃ何々をしなさいと勧めたかと思うと、反対に何々をしてはならないと脅してみたりする。そんなキャッチコピーで売り込む健康本が巷(ちまた)にあふれるが、こちらは長生きしたけりゃ若いうちから資産形成に励みなさいという▼公的年金だけでは老後の生活を支え切れないので、後は自己責任で。そのためにお薦めの金融商品があります-まるで金融機関のPRを兼ねたような報告書を金融庁の金融審議会が公表したが、昨日あっさり引っ込めた▼「国民に不安と誤解を与え、政府のスタンスとも異なる」として麻生太郎金融担当相が報告書を受け取らない意向を表明、事実上撤回した。報告書は、真面目に勤め上げても年金収入だけでは月々5万円の赤字となり、95歳まで生きれば2千万円不足するという夫婦2人の平均的な老後生活を描く▼公表後国民から猛反発を受けているため、近づく参院選への影響を避けたいのが受け取り拒否の本音だろう。しかし報告書は公的年金の現状と先細りする将来について客観的な姿を描いている。政府のスタンスと異なるというのなら、どこがどう違うのか説明してほしいが、麻生担当相は「報告書は一部しか読んでいない」と国会答弁▼正直な報告書を「誤解を招く」と引っ込められても国民は何を信じていいかますます混乱する。長生きしたけりゃ年金を信じるな、だけは勘弁してほしい。(前)

2019年6月12日 無断転載禁止