2歳女児衰弱死/幼い命救えなかったか

 しつけに名を借りた家庭内の体罰を禁止する児童虐待防止法と児童福祉法の改正案は与野党による修正合意を経て先に衆院を通過、今国会で成立する見通しとなった。これを受けて山下貴司法相は、親権者は監護や教育に必要な範囲内で子どもを懲戒できると定める民法の「懲戒権」の見直しを近く法制審議会に諮問すると明らかにした。

 そんな中、今月、札幌市で2歳女児が衰弱死した。十分な食事を与えられなかったとみられ、発見時の体重は平均の半分で6キロ程度。頭や顔などにあざがあり、傷害容疑で母親と交際相手の男が逮捕された。市児童相談所と警察には昨年9月から、たびたび近隣住民の通報があった。

 幼い命は救えなかったか。昨年3月に東京都目黒区で5歳女児が、今年1月には千葉県野田市で小4女児が父親らの虐待で亡くなり、児相の体制強化や警察との連携などが叫ばれた。ところが札幌の事件で児相は、道警から母子との面会に同行しないよう求められたと説明。道警はこれを真っ向から否定している。

 主張の対立はほかにもあり、連携がほとんど機能していなかったことが浮き彫りになった。法改正と懲戒権見直しを絵に描いた餅に終わらせず、児童虐待の根絶に一歩でも近づくには現場の対応力底上げが大きな課題となろう。

 札幌市などによると、住民から児相への最初の通報は昨年9月。職員が自宅アパートで母子と面会した。今年4月にも怒鳴り声や泣き声を聞いたと通報があり、自宅を訪問。不在だったが、数日後に母親と連絡が取れ、問題なしと判断した。5月中旬には、泣き声がするとの110番で道警が母子に面会、女児にあざがあるのを確認した。

 しかし母親から「転んだ」と説明され、児相には「虐待を疑わせる傷ではない」と連絡した。

 目黒の事件を受け政府は、児相が虐待通告から48時間以内に子どもの安全を確認できないときは立ち入り調査をするというルールの徹底を通知したが、札幌の事件では2回目の通報以降、それが守られなかった。5月の面会を警察から事前に知らされても、児相は積極的に動こうとはせず、結局、最後まで女児の安全を直接確かめなかった。

 児相の所長は事件発覚直後の記者会見で、5月に面会した道警からの情報に基づき、虐待事実はないと判断したのは妥当と釈明。48時間以内に安全を確認できず、5月の面会に同行しなかった理由として人手不足を挙げた。だが、しばらくすると、5月の面会に同行しないよう道警から要請があったと説明した。

 道警は「そのような事実はない」と反論。面会を前に、強制的に部屋に立ち入る「臨検」の検討を児相に要請したとした。これに対し児相は「要請されたとは理解していない」と話している。

 一連の経緯を詳しく検証する必要がある。ただ児相は児童福祉に関する高い専門性を持ち、子どもの権利を守るために子どもや家庭を支援する責務がある。虐待リスクを見極めるに際して、警察の情報提供に寄りかかるのは本来あるべき姿ではないはずだ。

 虐待防止に向けた情報共有と連携は児相が主導して行う必要があり、その役割分担が揺らげば法改正の実効性を確保するのも難しいだろう。

2019年6月16日 無断転載禁止