看護学生の教養教育/図書館活用し読書推奨

 島根県立大学長代行 山下 一也

 18歳人口の減少により、近年、大学の「学部の新設・再編」が非常に活発になっている。まさに「大学淘汰の時代」の状況であり、国公立大学も例外ではない。

 大学は平成の30年間で約300校増え、約800校までになった。新しく設置された学部や学科の中では、「地域」の視点を持つことの重要性の高まりや高齢化社会の到来により、「健康・福祉」「医療・看護」領域の社会的ニーズに沿った学部、学科が多い。その中で看護系はいまだに毎年新設が続いている。

 看護教育においては、以前は1年次から4年間の看護の専門教育を行えば、卒業時点で「即戦力」が出来上がると信じていたのであるが、最近では看護の職場ほど教養が必要であることが認識されつつある。

 すなわち、実際の医療現場では、看護師も医師と同じく人間の生死に直接関わり、それを科学的な根拠を持って判断することが要求される職業になっている。

 「生命倫理」の習得は、さまざまな臨床の状況下で問題に対する正解が必ずしも存在せず、患者・家族・医療者皆が賛同する答えが得られない場合も多い。医学的適応、患者自身の希望、家族との関わり合いや、患者の社会経済・文化的立場など、自分たちの今までの経験則からだけでは判断できない症例も多くなっている。

 このような状況下では、相互のコミュニケーションを促進する技術、相手に対する敬意、聞き上手であること、患者目線に立って話を聞くことや相手の話に興味をもって聞くことなどの能力、すなわち、患者の訴える情報を適切に処理できるかどうかが大切であり、それは、臨床現場での教育だけでなく、教養教育によって醸成されるものだと痛感する。

 しかし、教養を身に付けるのは、大学での1、2年次での教養科目を、単に多く履修すれば身に付くものではない。その良い方法の一つと考えられるのが読書であり、読書を通じて、古今東西の賢人や哲人や文人の言葉に耳を傾けることが重要だと思う。

 読書を代表とする疑似体験は、実体験に比べれば深さも強烈さも小さいが、他人を理解する力を付けるには、手軽でとても良い手段である。

 看護学生だけでなく、今の大学生は簡単にネットで欲しい知識を手に入れ、本や新聞を次第に読まなくなっているのは全国的な傾向だ。多くの大学で、読書や図書館の活用を強く勧めているが、なかなか活用ができていないのが現状である。

 一方では、今までの図書館の常識を覆すような試みを行っている大学図書館が広がりつつある。例えば、近畿大学ではアカデミックシアターと称して、図書館を全面ガラス張りの複合施設にして、カフェ併設など学生のたまり場の仕掛けをいろいろ行っており、図書館を「超おしゃれ空間」として多くの学生を呼び込むことに成功している。

 今後、これらの成功事例などを取り入れ、島根県立大学出雲キャンパス図書館でも、在学生への教養教育の資源としての積極的な活用を進めながら、看護教育の中で教養教育が特に充実した大学として特徴づけたいと考えている。

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 やました・かずや 医学博士。専門は神経内科、神経心理学。島根医科大学医学部卒業後、1991年にカリフォルニア大学デービス校神経科研究員として留学。津和野共存病院院長、島根県立看護短期大学教授、島根県立大学出雲キャンパス副学長などを経て、2019年4月から島根県立大学学長代行。

2019年6月16日 無断転載禁止