骨太方針/「痛み」には踏み込まず

 政府は経済財政運営の指針である「骨太方針」を閣議決定した。10月の消費税増税実施を改めて確認した上で、これによる需要減退を防ぐ対策を2020年度当初予算にも盛り込む方針を打ち出した。米中貿易摩擦などから景気減速の恐れが認められる際も、機動的な経済対策を実施すると明記した。

 その一方で、痛みを伴う財政再建や社会保障改革についての具体論には踏み込まなかった。2千万円必要とした老後資金問題で、麻生太郎金融担当相が報告書の受け取りを拒否し、年金制度の健全性を吟味する財政検証の公表が遅れている問題と同様に、国民負担増につながる問題にふたをした構図が見て取れる。

 財政制度等審議会の建議でも、年金給付水準の低下を見込み自助努力を促す記述が後に削除されていたことが判明した。

 政策立案・運営の基本となる各種の指針で、改革への後退姿勢が相次いでいる背景として、参院選を控えた政権・与党の思惑を指摘せざるを得ない。少子高齢化の進展や社会保障経費の増大などで国民が不安を高めているのは、政策や制度の持続性だ。それに正面から応えない態度は無責任と言うほかない。

 消費税増税を巡っては既に19年度予算で負担軽減措置を手当てしているが、骨太方針は20年度当初予算を活用し、さらに手厚く対応する方針を打ち出した。景気の腰折れを防ぐ必要性は認めるが、過剰な対応は財政再建をさらに遠ざけることになる。10月の増税後の情勢を丁寧に検証し、政策内容、規模は厳格に検討するよう注文しておきたい。

 追加経済対策については「リスクが顕在化する場合には、機動的なマクロ経済政策をちゅうちょなく実行する」と、かなり前のめりの姿勢を示している。一方で、財政健全化は、25年度に基礎的財政収支を黒字化するとした18年度の方針に触れた程度で、あっさり流した印象だ。

 財政運営の健全化を進める上で急務になっている給付と負担の在り方を見直す社会保障改革は、団塊の世代が75歳以上になり始める22年が迫っているにもかかわらず、次回に先送りされた。社会保障関係では在職老齢年金制度を取り上げ「将来的な廃止も展望しつつ見直す」とした。これは一定の収入がある人の年金を減額している今の仕組みを改め、減額の取りやめか縮小につながる制度変更だ。

 高齢者の働きがいを維持し、人手不足解消にもつなげようという目的は否定しないが、財源確保策がはっきりしない上に、社会保障改革全体の中での位置づけをどう整理するのかは不明確だ。

 安倍晋三首相が進めてきた経済対策アベノミクスは、金融緩和と財政出動で景気を下支えしている間に、将来性のある分野での事業環境改善などの成長戦略を実施し、成長路線を築く構想だ。しかし、いまだに財政拡張と金融緩和に多くを依存し、副作用も懸念される事態が続いている。

 今回も成長戦略として、巨大IT企業の規制強化や、地方銀行やバス事業の経営統合の促進、就職氷河期世代の正社員化などが盛り込まれたが、少し総花的になっていないか。実効性を上げるには、課題の緊急性から取り組みの優先順位を検討することも必要だろう。

2019年6月25日 無断転載禁止