島根創生計画/目標を県民と共有せよ

 島根県が行政を進める上で最上位の計画となる島根創生計画を本年度中に策定することになり、その中で人口減対策の目標達成時期を前倒しする。

 女性が一生の間に産む子どもの数を示す合計特殊出生率を高めながら、社会減を食い止める時期を現行目標より早め、島根創生の新たなビジョンを描く。

 人口減対策を柱とする現行の県版総合戦略では、2040年までに県外に流出する人口と流入する人口を均衡させるとともに、合計特殊出生率を2.07とする目標を掲げている。

 来年度から5年計画でスタートする島根創生計画では出生率目標を5年前倒しして35年までに達成し、社会増減を均衡させる時期を10年早めて30年までとする。

 いずれも人口動向を決める基本要素であり、自ら目標のハードルを上げて人口減対策を加速させようとする姿勢は挑戦的だ。しかし新たな目標達成のためにはこれまでの施策の延長では限界があり、戦略の見直しが欠かせない。

 産業振興や子育て支援などこれまで進めてきた人口減対策に新たな工夫を加えなければならない。そのために行政側の視点だけではなく県民との対話を深め、家庭や職場、地域など日常生活の現場から政策ニーズをくみ取る仕組みづくりが必要だ。

 現行の県版総合戦略が策定される直前の14年の島根県の合計特殊出生率は1.66、社会増減は1325人減だったのが、18年には1.74、169人減にともに改善された。特に出生率は18年、沖縄県に次いで全国2位となるなど子育て先進県となっている。

 この実績を加速させれば目標前倒しは可能と県は判断。新たな目標が達成されれば40年の県人口は56万人となり、現行目標より1万人多くなる。政策的な努力をしなかった場合の「自然体人口」に比べれば4万人上乗せされる。

 新たな目標達成のための具体的な施策は今後検討していくが、目標倒れとならないよう実現可能な道筋を描いていかなければならない。

 そのために総論的な産業振興より人手不足に悲鳴を上げる県内事業所の生の声に耳を傾けるべきだ。高校や大学の新卒者の採用が厳しくなる中で都会地などで働いている県出身者を即戦力として呼び戻す方策はないか、真剣に検討してほしい。

 松江市出身の社会学者で若者の人口移動などを研究している吉川徹・大阪大教授は「中央省庁や大企業の中堅クラスで都会生活に疲れて故郷に帰りたがっている人は多い。しかし帰っても適当な働き場があるかという不安が壁となっている」という。

 こうした人たちの受け皿として県内の有力企業が中途採用を積極的に進める方法もあるのではないか。ある程度の処遇で迎えれば帰ってくるかもしれない。そうした潜在的なUターン需要を地元企業に橋渡しする仕組みづくりを考えたい。

 子育て支援では邑南町が実施している妊娠期から児童期までの相談を一括して受ける拠点サービスなどが参考となる。子育て相談に関するワンストップサービスを全県に広げてはどうか。

 新しい目標を県民と共有しながら、どう実現するか。意気込みの空回りは避けたい。

2019年6月28日 無断転載禁止