日中、日米首脳会談/主体性持ち戦略的に

 安倍晋三首相は20カ国・地域首脳会議(G20大阪サミット)に出席するため来日した習近平中国国家主席、トランプ米大統領と個別に会談。習氏とは、2012年の尖閣諸島国有化で著しく悪化した日中関係が「正常な軌道」に戻ったことを確認した。

 トランプ氏との会談では、強固な日米同盟の重要性と北朝鮮、イラン問題の解決に向けた協力を再確認し、日米、米中間の貿易摩擦の解消に努めることで一致した。

 米中両国の覇権争いが激化する中、中国や朝鮮半島に隣接する日本の立場は微妙だ。中国の強引な対外進出を抑え民主化を促す点では日米の連携、トランプ氏の一国主義や貿易保護主義に反対する点では日中協調が必要だ。北朝鮮の非核化問題では日米中韓ロの多国間の協調も不可欠だ。

 日本は日米同盟を外交・安全保障の基軸としながらも、対米追随ではなく、主体性を持ち、米中など各国とそれぞれ良好な関係を築き、個別の問題について冷静で戦略的に対応していく必要があろう。

 首相は日中会談で(1)競争から協調へ(2)互いに脅威にならない(3)自由で公正な貿易の発展-の3原則を挙げて日中関係の発展を歓迎し、習氏は「新時代の関係構築に共に努力したい」と応じた。両首脳は習氏の来春の公式訪日に合意した。

 2年前、習氏が提唱する現代版シルクロード経済圏構想「一帯一路」に首相が支持を表明したことが歩み寄りのきっかけだった。互恵が原則の経済貿易を軸とした関係修復を評価したい。

 一方、安倍首相は尖閣周辺の中国公船の活動自制や、中国が進出する南シナ海の非軍事化を求めた。中国の少数民族ウイグル族弾圧や香港の大規模な反中国デモについても懸念を伝えた。安全保障や人権問題ではなお対立が続く。日本は欧米とも協調し、中国が平和主義を体現し、民主化を進めるよう粘り強く働き掛けていくべきだ。

 3カ月連続の日米首脳会談では、共通の安全保障上の課題に協力して取り組むと確認。首相は「日米首脳の頻繁な往来は強固な日米同盟の証しだ」と強調した。

 5月のトランプ氏来日時には海上自衛隊の護衛艦に両首脳が乗艦。中国の軍備拡張・海洋進出を強く意識し、同盟の一体化をアピールした。

 ただ今回の日米会談では「世界各地での日米同盟協力の深化、拡大」を確認し、中東・ホルムズ海峡での共同行動までを念頭に置く。巨額の米国製防衛装備品の購入と併せ、前のめりの対応は危ういと言わざるを得ない。

 日米貿易交渉では協議加速を確認した。ただ、トランプ氏は対日貿易赤字を問題視していると改めて表明、安保問題も絡めて圧力を強めた。米中貿易協議と同様に厳しい交渉が予想される。

 日中会談では、自由で公正な貿易体制の維持・発展を確認した。G20で反保護主義を明確に打ち出せるか、議長の安倍首相の手腕が問われる。

 北朝鮮の日本人拉致問題を巡り、習氏は先の訪朝で金正恩朝鮮労働党委員長に「日本の立場と首相の考え」を伝えたと説明。トランプ氏も日朝首脳会談の実現を全面的に支持すると表明した。ただ、米中の働き掛けに期待するだけでなく、日本の主体的取り組みが求められる。

2019年6月29日 無断転載禁止