米中首脳会談/秩序だった競争を

 トランプ米大統領と習近平・中国国家主席は大阪での会談で、米国が3千億ドル相当の中国からの輸入品に課すと表明していた制裁関税「第4弾」の発動を当面見送り、貿易協議を再開することで合意した。

 昨年7月に米国が「第1弾」の対中関税を発動して以来、続いている貿易を巡る対立の激化を回避したことを歓迎したい。しかし「第4弾」を見送るだけでこれまでに両国が発動した制裁関税は維持され、貿易戦争の終結に至る見通しは立っていない。中国による産業補助金など国家の根幹にかかわる問題や、米国による安全保障を理由とした中国企業の活動への懸念など根本的な問題で対立は埋まっていない。

 トランプ氏は記者会見で中国への米農産物輸出拡大への期待を表明しており、再選を目指す来年の大統領選を前にして、農業州を喜ばす妥協という狙いが明らかだ。対中強硬姿勢が選挙に有利と考えれば、再び追加関税発動へかじを切る可能性も残る。

 トランプ氏は「米国の対中貿易赤字はとてつもない額だ」と述べ、貿易赤字が解消すれば、両国関係はある程度改善する見通しを示した。貿易不均衡は政府交渉で是正が可能だろうし、激化しないような管理もできる。

 現在の米中間の対立は貿易問題に始まり、外国企業に不利となる経済慣行や軍事力強化に必要な先端技術の急速な開発など、中国のさまざまな政策に対する米国の不満が交じり、トランプ政権の対応は混乱している。

 その中でも追加関税は既に世界経済に打撃を与えているし、関税合戦の激化の影響は計り知れない。今後の協議では中国が神経質になっている産業補助金など国家体制に絡む問題や、米国の安全保障上の懸念といった長期的に対処すべき問題は切り離して、貿易を巡る双方の不満を解消することに専念すべきだ。

 もちろん米中間の問題の根本にあるのは今後長期間にわたって展開する覇権争いだ。

 覇権を握る米国と台頭する中国の間では最新鋭兵器の開発・配備や戦力の展開、アジア太平洋地域を中心とした世界各地での影響力を巡る競争関係は避けられない。

 だが、米中間では協力できる分野も多い。協力を強化し、関税合戦など世界各国を巻き込む対立にエスカレートさせない知恵が求められる。

 協力分野の一つが北朝鮮情勢だ。習近平氏は20日から平壌を訪れ金正恩(キムジョンウン)・朝鮮労働党委員長と会談し、それを踏まえてトランプ氏に米朝首脳会談の早期再開を促した。トランプ氏も29日からの韓国訪問の際に訪れる北朝鮮との軍事境界線がある非武装地帯(DMZ)で金正恩氏との面会を呼び掛けるなど、前向きだ。

 米中間には緊張が高まっているイランなど中東情勢、テロ対策、核兵器など大量破壊兵器の拡散防止など協力できる分野が多い。冷戦時代の米ソ関係も世界を東西両陣営に分割し軍事的な緊張をたびたび起こしながらも、それなりのルールに沿った競争で何とか決定的な対立を避けた。

 米中関係も、「米国第一主義」の米国と拡張主義の中国が今の歩みを続ければ、世界が親米圏と親中圏に分割されていく可能性がある。秩序だった競争関係の構築は米中両国の責務だろう。

2019年6月30日 無断転載禁止