参院選公示/安倍政治の検証が争点だ

 参院選がきょう公示される。史上最長を射程に入れた安倍晋三首相の政権運営や実績に対する評価が最大の争点だ。内政、外交と難題が山積する中で、6年半余りにわたる「安倍政治」をしっかりと検証し、各党、各候補者の主張を吟味した上で、この国の未来を託す1票を投じたい。

 まず選挙で問われるべきは政権の政治姿勢だろう。自衛隊の日報隠し、財務省の森友学園関連の公文書改ざん、厚生労働省の統計不正、金融庁の審議会報告書をきっかけにした年金不安…。ここ数年、民主主義の土台を揺るがすような不祥事が表面化した。背景には1強体制への忖度(そんたく)の空気があるとも指摘され、長期政権のおごり、緩みとも言うべき現象が相次いだ。

 それを受けて政権と与党はどう対応したのか。さまざまな疑問や懸念に真摯(しんし)に向き合い、解消しようとしたのか。情報を十分に開示して説明責任を果たしたのか。有権者は判断の重要な物差しにしなければいけない。

 行政の監視が大きな役割の国会の権威失墜、機能不全は目を覆わんばかりだ。言論の府から熟議が消え、最後は数で押し切る光景が常態化。先の国会では予算委員会も長期間設定されなかった。国会を再生させるには、どの政党、どの候補者がふさわしいかも考えてほしい。

 内政課題では、アベノミクスの真の評価、消費税率引き上げ、安倍首相が「国難」と呼ぶ人口減少、少子高齢化への対策などが論点になろう。政権のここまでの対応、各党が公約で提示した”処方箋”について21日の投票日までに有権者に判断材料を与える中身のある論戦が必要だ。

 安倍首相による「地球儀俯瞰(ふかん)外交」の総括も欠かせない。トランプ米大統領との親密な関係を基に強固な日米同盟を構築した。ただ「自国第一主義」を掲げ、国際協調から背を向け、世界に混乱をもたらしている異端の指導者と今後どう付き合っていくのかは議論が分かれるだろう。

 日米貿易交渉も、大統領が参院選後の「取引」を予告したとあって、「白紙委任」を避けるためにも、選挙戦ではせめて「譲れない一線」を示すべきではないか。従来の方針を転換して前のめりになりながら、成果に乏しい北方領土問題に関するロシアとの交渉も説明が求められている。

 日本記者クラブの党首討論会では、参院選の争点を巡り、自民党が「政治の安定」を掲げたのに対し、多くの野党は「生活防衛」など、国民の暮らしを重視する立場を訴えた場面が目立った。安倍首相は憲法改正を争点に据えると表明してきただけに、各党が取り組もうとしている政策の優先順位も見極めたい。

 国政選挙では、耳当たりの良い、カラフルな公約が発表され、そのキャッチフレーズなどに目が奪われがちだ。だが、財源の裏打ちを含め、本当に実現可能な政策なのか、厳しくチェックする作業も不可欠である。

 最近の選挙は、投票率の低下傾向が顕著だ。公約を隅から隅まで読む余裕がなければ、一番関心のあるテーマだけでも、各党の主張を比べてみればいい。自分たちが納めた税金の使い道は自分たちで決める、それが国民主権だ。お任せ民主主義と決別しよう。1票は微力かもしれないが、決して無力ではない。

2019年7月4日 無断転載禁止