G20と温暖化対策/明確なメッセージ出せず

 大阪市で先日開催された20カ国・地域首脳会議(G20サミット)の主要議題の一つは地球環境問題、それも地球温暖化への取り組みだった。パリ協定を支持する19カ国・地域と、これを拒否する米国との見解の相違は大きく、首脳宣言の文言の交渉は難航。結局、米国がパリ協定からの離脱方針を改めて表明、他が協定の完全実施を再確認するとした「19対1」の構図に落ち着いた。

 その内容も過去の宣言をなぞったものに終わり、温暖化の危機を回避するための取り組みを強めるとの明確な政治的意思も、社会へのメッセージも読み取れない。

 パリ協定が本格始動する2020年を目前に控え、議長を務めた安倍晋三首相ら各国のリーダーは危機感を深め、一層の対策強化に取り組む覚悟を持つべきだ。

 今回のG20で温暖化問題が注目されたのは、来年からパリ協定が始動するのに加え、来年までに各国が新たな温室効果ガス削減目標を事務局に提出することになっているという重要な時期に今、差し掛かっているからだ。

 産業革命以来の平均気温の上昇を2度より十分低く抑え、1.5度に近づける努力をするというパリ協定の目標達成には、現在、各国が表明している削減目標では遠く及ばず、削減目標の深掘りが求められている。

 首脳宣言は19の国と地域が、20年までに新たな目標の提出を目指すと明言。提出に際しては「さらなる世界的な努力が必要であることを考慮」するとした。

 日本国内で削減目標強化に関する議論がほとんど行われていないことに危機感を感じる。「30年度に13年度比で26%削減」との現行目標と、その達成のための地球温暖化対策計画の見直しを早急に開始し、深掘りの可能性を探ることが必要だ。

 多くの国に比べて本格導入が遅れている炭素税や排出量取引など、二酸化炭素排出への課金で排出抑制を促す「カーボンプライシング」の制度化を真剣に考えるべきだ。

 温暖化などの地球規模課題の解決に向けてリーダーシップを示すとしていた安倍首相だが、G20の議論でこれが達成できたとは思えない。

 温暖化の議論で議長国日本は、早くからパリ協定を拒否する米国への配慮を鮮明にし、過去のG20の合意よりも大幅に後退した首脳宣言原案を示して、欧州諸国などから激しい反発を食らった。

 温暖化対策への積極姿勢を示しながら、各国で削減が進んでいる石炭火力発電を推進する姿勢に固執していることにも批判の声が相次いだ。

 宣言が基本的に過去の合意内容を繰り返したものに終わり、主要国が温暖化対策を強化するのだとの姿勢を明確にできなかったのは、米国を孤立させてでも、思い切った内容で合意するのだという議長国の覚悟が足りなかったからだと言えよう。

 石炭火力発電からの脱却、再生可能エネルギー開発や省エネルギーのさらなる推進など日本の政策が抱える課題は多い。傷ついた信頼を取り戻し、環境問題解決で世界をリードするという首相の発言を口先に終わらせないために

は、これまでに比べ一歩も二歩も進んだ国内政策によって一層の排出削減を進める姿勢を内外に示す必要がある。

2019年7月5日 無断転載禁止