香港議会突入/弾圧の口実にするな

 中国本土への容疑者引き渡しを可能にする「逃亡犯条例」改正案に反対する香港の若者たちが立法会(議会)に突入、警察は催涙弾で強制排除し、多数が負傷した。中国、香港両政府は「違法な暴力行為」と若者らを非難し、刑事責任を徹底追及する方針を示した。

 多数の香港市民は中国にとって「好ましくない人物」が引き渡されると強く反対しており、両政府は早期に条例改正案を撤回すべきだった。

 もちろん、デモは合法的でなければならず、暴力行為は許されない。しかし両政府は香港の自由と民主主義を重んじるべきで、議会突入を口実に、香港の「中国化」に抵抗する正当な市民運動を弾圧してはならない。

 英国の植民地だった香港が中国に返還されて22年を迎えた1日、民主派が行った恒例のデモには55万人(主催者発表)が参加。約3万人が立法会を包囲し、数百人が議会に突入した。

 香港政府は6月中の条例改正案の採決を目指していたが、9日の103万人(同)の大規模デモなど激しい抗議を受け、審議の延期と来年7月の立法会会期終了に伴う廃案を表明していた。

 だが改正案の完全撤回を要求する若者たちの反発は収まらず、香港トップの林鄭月娥行政長官に対する怒りが爆発し、議会突入に至ったとみられる。突入を容認するような警察の動きや若者らの計画的、組織的な破壊活動から、当局側が故意にやらせたとの疑念もあるが、外形的には暴徒化であり、運動側は不利な立場に追い込まれた。

 林鄭氏は会見で「違法な暴力行為で憤りを覚える」と強く非難し、警察が徹底的に追及すると述べた。中国の香港マカオ事務弁公室も「一国二制度の最低ラインに対する公然とした挑戦だ」と批判し、香港当局の強制排除や刑事責任追及に支持を表明した。

 両政府は暴力行為を機に反転攻勢に出る構えだが、香港が中国化して、大陸にのみ込まれてしまうことに市民は強い危機感を持つ。中国の投資や移民の増加に伴う住宅価格の高騰や格差の広がりへの不満も大きい。強権で反中国世論は抑えきれないだろう。

 中国は香港返還の際「一国二制度」と「高度の自治」を約束した。英国のハント外相は、2原則を明記した1984年の英中共同声明が順守されなければ「深刻な結果を招く」と警告した。国際公約をほごにするべきではない。

 6月4日、中国当局が民主化運動を武力で弾圧した天安門事件から30年を迎えた。新疆ウイグル自治区の区都ウルムチ市で起きた少数民族ウイグル族の大暴動から7月5日で10年。中国の非民主的な政治制度に世界の注目が集まる節目が続く。

 大暴動の後、爆弾テロや他の暴動も重なり、自治区当局は顔認証など先端技術を駆使した監視網を敷いた。昨年8月、国連人種差別撤廃委員会は自治区で、推計数万人から100万人超のウイグル族がテロ対策名目で不当に長期間拘束されているとの報告書を発表し即時解放を勧告した。

 中国政府はなお人権派弁護士や少数民族の活動家への弾圧を続ける。国際社会は中国の人権弾圧に反対して状況の改善を求める一方、香港などに非民主的な制度を広げないよう歯止めをかけたい。

2019年7月6日 無断転載禁止