JOC山下新体制/自律の確認が求められる

 日本オリンピック委員会(JOC)の新会長に1984年ロサンゼルス五輪の柔道金メダリストで、国民栄誉賞受賞者の山下泰裕氏が就いた。

 山下氏はJOC理事として、アスリートを支える指導者や保護者らのより良い在り方について考える専門部会を率いた。特に指導者による暴力根絶の活動を進めた。

 さらに、この2年間は五輪での選手団の好成績達成が最重要課題となる選手強化本部の本部長に就いていた。東京五輪が約1年後に迫る中、会長として、より幅広く国内の「五輪運動」を推進する重責を担うことになる。

 今回のJOC新体制の人事では政府関係者の意向が反映された部分がある。竹田恒和前会長の退任が固まって間もなく、東京五輪・パラリンピック組織委員会の有力幹部が新JOC会長には山下氏が好ましいとの考えを示した。

 JOCの定款では、会長は理事会の決議によって理事の中から選定する規定。改選期を迎え、まだ新任、再任の理事すら決まっていない時点で、新会長候補について特定の人物の名前がJOCの外部から挙がるというのは、異例であるばかりか不適切だ。

 五輪憲章は「国内オリンピック委員会は自律性を確保しなければならない」と明記。政治的な圧力を含め、五輪憲章の順守を妨げる恐れのあるいかなる圧力にも対抗しなければならないと定めている。

 外部からの働きかけによって、JOCの自律が揺らいでいるようにみえる。このような動きは会長人事にとどまらないからだ。新理事の1人には競技団体に大きな影響力を持つ、スポーツ庁の競技スポーツ課長だった文部科学省のキャリア官僚が就いた。今後は出向の形態で、JOC本部で働く予定だ。

 JOCが正式な意思決定を経て、豊富な知見を持つ官僚を自主的に迎え入れるのなら問題はない。しかし、この理事就任にはスポーツ行政と関わりの深い国会議員の強い後押しがあったとされ、JOC側が要望したものではない。

 JOCのさまざまな政策を編み出すのが理事会だ。その意思決定に中央行政から出向した官僚が加われば、国による国内五輪委への関与とみなされるのではないか。

 こうした動きには伏線がある。スポーツ議員連盟は昨年、五輪4連覇のレスリング女子選手が元強化本部長によってパワハラを受けていたこと、またボクシング連盟の元会長が助成金を不正に分配していたことなどを重大な問題だと批判した。

 その上で、スポーツ界の自主的な問題対応には限界があるとして、限定的だった国の関与を強化する方向で議論を進めた。

 しかし、この2競技での疑惑は、いずれも関係者が内部告発し明らかになったものだった。第三者機関による調査を実施して事実を認定し、当事者を適正に処分した。そこには一定の自浄作用が認められた。

 けれども、いったん硬化した議連の姿勢は軟化しない。JOCなど統括競技団体に対しても、監視機能を果たしていないと手厳しい。

 外圧は大きい。JOCは踏ん張りどころだ。アスリートを支援するため質の高い新たな方策を打ち出すためにも、自律の確認が求められる。

2019年7月7日 無断転載禁止