参院選・憲法/各党の訴えの吟味を

 参院選は今後の憲法改正論議の行方を左右する極めて重要な岐路となろう。2020年までの改正憲法の施行を目指すと表明している安倍晋三首相は、「改憲を議論する政党を選ぶか、審議を全くしない政党を選ぶかを決める選挙だ」と主張。自民党は9条への自衛隊明記など4項目の改憲案を公約に掲げた。

 今回の選挙で、憲法改正に前向きな「改憲勢力」が国会発議に必要な3分の2以上の議席を維持すれば、首相は改憲論議促進の訴えが支持されたとして早期の国会発議を目指し、議論を主導しようという考えだろう。

 ただ改憲を急ぐよう求める声が今、国民の間にあるだろうか。報道各社の世論調査では、参院選で重視するのは、社会保障や経済政策であり、憲法の優先順位は低い。

 安倍首相は野党が憲法論議を拒否しているかのように批判するが、立憲民主党も「首相の衆院解散権の制約」などの改憲案を主張し、議論を否定しているわけではない。首相の争点設定は強引だと言わざるを得ない。問われるべきなのは、国の在り方の根幹を定める憲法のどこを、なぜ、どう変えるのか。その必要性が今あるのか、という具体的な中身だ。各党、候補者の訴えをしっかりと吟味したい。

 自民、公明、日本維新の会などの「改憲勢力」が今回の参院選で3分の2以上の議席を維持するには、自民党は大勝した6年前の参院選並みの議席獲得が必要となる。

 首相は日本記者クラブの党首討論会で「国民民主党の中にも改憲に前向きな方々がいる」と言及した。3分の2に届かなかった場合、野党議員にも呼び掛けて多数派の形成を目指すことも予想される。選挙後の連携の動きを見定めるためにも個々の候補者の主張を精査する必要があろう。

 一方で、改憲勢力の間でも具体的な改憲案で見解が一致しているわけではない。自民党は9条と緊急事態対応、参院選の合区解消、教育充実の4項目を掲げる。

 首相は9条への明記で「自衛隊違憲論争」に終止符を打つと主張する。だが、公明党は公約で「多くの国民は自衛隊を違憲の存在とは考えていない」と指摘、「慎重に議論されるべきだ」としている。9条明記で自衛隊の任務や権限は変わらないのか。参院選で多数を得たとしても、丁寧で精緻な議論が必要だ。

 共産、社民両党は「憲法を生かす政治」を主張し、改憲に反対する。一方、立民や国民は具体的な改憲項目を提示している。一つは解散権の制約だ。首相に自由な衆院解散権を認める憲法解釈の下、先の通常国会でも解散の観測に振り回され、国会ではまともな審議が行われなかった。国会の機能再生のためにも検討すべき課題ではないか。

 立民はこのほか「知る権利の尊重」を、国民はさらに「地方自治の保障」などの改憲テーマを公約に掲げる。どの党の改憲提案に必要性と妥当性があるかを見極めたい。

 首相は先の通常国会での憲法審査会が極めて短時間しか開かれなかったとして、野党の姿勢を批判した。だが、国民投票でのCM規制の議論を優先するよう主張する野党と調整が付かなかったのが実態だ。改憲手続きを定める国民投票法の問題点への対処は、改憲論議の前提である。建設的な議論を求めたい。

2019年7月9日 無断転載禁止