参院選・消費税/どこに税源を求めるのか

 参院選は、消費税増税実施の与党と反対の野党が争う構図だ。財政再建を進め、社会保障制度の持続性を維持するためには歳入を増やすことが避けられないが、どこに税源を求めるのか、あるいは、いつから課税を始めるのかといった問題は、景気動向や経済社会の在り方についての考え方によって変わってこよう。

 老後資金2千万円問題で公的年金に対する不安や不満が広がっている。一方で、社会保障制度を支える財政の傷みも激しい。家計や企業業績、市場動向など現在の日本経済の状況、見通しを踏まえた上で、景気への悪影響を極力避けつつ、財政再建を着実に進めるためには、どうすればいいのか。与野党が舌戦を交わす中で、じっくり考える機会にしたい。

 政権選択の選挙ではないので、選挙結果によって政権の構成が変わるわけではないが、21日に示される民意は、今後の政策運営の土台になるはずだ。

 与野党は負担増を伴う痛みに正面から向き合い「不都合な」事実も説明した上で処方箋を示さなければならない。国民の歓心を買おうと、聞き心地の良い言葉ばかりを並べるようでは政治に期待される役割は到底、果たせまい。財政運営や社会保障政策の現状認識や将来像について責任を持った主張をしているかどうか目を凝らしたい。

 政府は増税できる経済環境が続くと判断、軽減税率やキャッシュレス決済でのポイント還元などの負担軽減策を施した上で10月に消費税率を10%に引き上げる。しかし全世代型社会保障の構築の一環として増収の一部を教育無償化に回すため、増税による財政再建の効果は後退する。

 安倍晋三首相(自民党総裁)は先日開催された日本記者クラブでの党首討論で、2018年度の税収がバブル期を超えて過去最高の60兆円超となったとした上で、今後10年程度は消費税を引き上げる必要はないとの認識を示した。

 しかし国の一般会計予算は100兆円。税収が過去最高となっても、必要額の6割しか賄えない状況に鈍感であってはならないだろう。歳入不足を補う国債を発行して帳尻を合わせ続けた結果、国と地方の長期債務残高は19年度末には1122兆円に上る見通しだ。利払い費が一般政策経費を圧迫している。

 税収が増えるにこしたことはないが、それをもって、財政再建の取り組みを緩めることは妥当とは言えまい。

 野党各党は景気への悪影響が懸念されるとして家計を直撃する消費税増税を実施しない代わりに、大企業や富裕層向けの課税を強化する必要性を強調している。

 余裕があるところにより多くの負担を求めるという基本的な考え方は理解できるが、税負担が重くなれば企業は競争力をなくし雇用や賃金にも影響が出る恐れもある。高額所得者の所得税率を引き上げれば、個人の才覚や努力の結果である富を国家がさらに徴収することになり、経済のダイナミズムが失われることにつながりかねない。

 課税対象や税率などの仕組みでこうした問題を容認できる程度に解消し、安定した税収を確保できるのか。有権者が判断するには情報不足だ。野党にはより現実に即した詳細な説明を求めたい。

2019年7月11日 無断転載禁止